2019/9/30 月曜日

法務省矯正局長・保護局長御視察される

Filed under: ブログ — admin @ 16:45:21

               愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 去る8月29日(木),法務省の名執雅子矯正局長及び今福章二保護局長が当更生保護会を御視察されました。二人の局長がそろって全国の更生保護施設を御視察されることは,極めてまれで,近年では初めてのことだそうです。なお,この度の御視察は,「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成28年法律第104号)の下で,今後,矯正及び更生保護機関相互の連携を一層強化していくことを目的としたものであり,それにふさわしい更生保護施設として当更生保護会が選出されたものと聞き及んでいます。
 御視察当日,二人の局長は,それぞれ随行者1人を伴って,午前11時50分に到着された後,当更生保護会内の地域交流室において催された約1時間にわたる昼食会及び情報交換会に臨まれました。その時,参加された他の方々は,高松矯正管区及び松山保護観察所の各長並びにその随行者のほか,愛媛県下の更生保護関係団体,すなわち,愛媛県保護司会連合会,愛媛県更生保護女性連盟,愛媛県BBS連盟,愛媛県就労支援事業者機構,愛媛県更生保護会及び愛媛県保護観察協会の代表者等各2人の合計20人でした。
 同昼食会及び情報交換会は,参加者全員でお弁当を食べながら,終始,和気あいあいとした雰囲気の中で行われ,二人の局長の,更生保護の現場の実情をできるだけ詳しく知りたいという率直な人柄と熱意にあふれた気持ちに動かされて,全員による忌たんのない話合いとなり,活発な意見交換や質疑応答が行われ,愛媛県の更生保護現場の実際を認識し理解を深めていただくとともに,さらなる充実と発展を期する上で,非常に実り多いものとなりました。
 続いて,当更生保護会の概況説明に移りましたが,午後零時50分から午後1時30分までの約40分間に,私がパワーポイントを使って当該説明を行った後,約20分間をかけて施設内各所を御案内し,午後1時50分に全ての予定を滞りなく終了して,二人の局長には,次の予定地に出発していただきました。
 なお,その施設概況説明において私が最も力を入れたことは,被保護者一人ひとりの再犯・再非行の防止を図るためには,その「自己肯定感」を高めることが不可欠であることはもとより,再犯等防止対策の2本柱である「居場所の確保」と「出番の確保」に関し,就労が困難な高齢者及び障害者等に対しては,「出番(就労)」に代わる別の施策が必要であり,それが,当更生保護会の場合には,施設及び地域の人的・物的条件等を生かした「生きがいづくり」であると考え,そのような施策の基本となる理念に基づいて,昨年(平成30年)8月から「高齢者等生きがいづくり農園作業」を始め,地域の方々と一緒になって運営していることを強調させていただきました。しかしながら,御視察の時間的制約から,当該「ふれあい農園ひまわり(雄郡寮)」に御案内できなかったことは残念なことでした。
 ところで,私は,私事ながら,前職の刑務官時代に名執雅子矯正局長と何度か面識がありましたので,到着後,同局長をお出迎えしたとき,「矯正の時と同じように,一生懸命に更生保護の仕事に励んでおられることを聞いています。大変良い施設運営を行っていますね。後ほど詳しく聴かせていただきます。」と,同局長から過分の御挨拶をいただき,大変感激いたしました。それとともに,思い出したのが,同局長と初めてお会いした,厚生労働省が平成24年度の社会福祉推進事業の一環として企画された,平成25年1月16日(水)開催の大阪ガーデンパレス(大阪市淀川区)における「全国地域生活定着支援センター協議会第3回現任者スキルアップ研修」のことでした。この時,私は,主催者のお招きにより,約600人を超える聴衆を前にして,「刑事施設における高齢受刑者等に対する社会復帰支援指導~長崎刑務所と高松刑務所の取組を中心として~」と題して講演を行いましたが,その研修の来賓の一人で,当時の法務省矯正局少年矯正課長として勤務されていた同局長から,我が国の社会情勢を反映して高齢化する刑務所人口に対する新たな社会復帰のための制度の構築や新しい施策の実施等に向けて,実務家の立場から積極的な研さんと実践に努めていくようにと,温かいお言葉をいただいたことを懐かしく思い出したのでした。
 御視察後においては,今福章二保護局長は,地元愛媛新聞記者の取材に応じられ,「職員らの熱意のこもった取り組みを知り、感銘を受けた。刑務所や更生保護施設、地域社会が一体となって立ち直り支援が可能になると改めて分かり、視察内容を今後に生かしたい」と話されました(令和元年8月30日付け愛媛新聞による。なお,同新聞からの転載につき,愛媛新聞社の承認済み。)。また,名執雅子矯正局長は,御視察後の9月13日(金)にいただいたお電話の中で,「先駆的な取組をされ,大変素晴らしい施設運営を行っていることを拝見して,非常に感銘しました。そのため,その後,いろいろな所で,いろいろな人たちに貴施設のことをお話しさせてもらっています。あれだけ多彩な処遇・指導等を活発に行っている施設は,他に見当たりません。模範的な施設だと思いますので,さらなる充実強化に努めてください。また,松田さんのように,矯正施設の幹部が退職後に更生保護施設の施設長に就任し,矯正処遇と更生保護との有機的関連性を深めていただけることは,非常に理想的な在り方だと思われますので,今後ともそのような人材が増えていくことを期待しています。」という所感をいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/8/28 水曜日

みんなのひまわりロード

Filed under: ブログ — admin @ 19:06:32

              愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 当保護会には,施設の南側に隣接する道路に沿って東西に約76メートルのフェンス(高さ約1.2メートル)が設置されていますが,その内側に,ほぼ同じ長さの花壇(幅約1.2メートル)が整備されています。
 ところで,その花壇には,たくさんのツツジが植えられているところ,本年6月から7月にかけて,それらツツジの間に74本もの見事な「ひまわり」が咲き誇りました。そのうち,最も茎の長いものは,何と3.4メートルもあり,頭花の中央部分の直径は24センチメートル,50枚の花びらのうち最長のものは7センチメートルありました。
 このような「ひまわり」をその花壇に植えることとなったいきさつなどについて紹介しますと,当保護会所在の松山市土居田町で活動している松山地区更生保護女性会土居田支部(会員数66人)の熊谷雅子支部長(73歳)からの提案に基づいて,本年5月から,同支部会員のほか当保護会の職員及び寮生(被保護者)が一緒になって土を掘り起こし,肥料をやり,種をまき,その後定期的に共同して草取りをし,頻繁に寮生が水やりをするなどして,大切に育てて咲かせてきたものです。
 つまり,熊谷支部長は,長い期間にわたって当保護会に関わっているうちに,その花壇に「ひまわり」を植えたいと考えるようになりました。そこで,昨夏来,当保護会の「ふれあい農園ひまわり(雄郡寮)」における農園作業において,同支部会員とともに,職員や寮生と力を合わせて野菜や花などを育ててきた経験と実績を生かし,この際,更生保護のシンボルマークである「ひまわり」を植え,「ひまわり」が咲いている環境の中で寮生に立ち直りの日々を過ごしてほしい,そしてまた,彼らを応援する地域であってほしいとの願いを込めて実行に移そうと提案されたのでした。
 そうした「ひまわり」を育てていく過程で最も気を配ったことは,猛暑の中で,せっかく芽生え成長した「ひまわり」を枯らさないようしっかりと水やりを行うことはもとよりでしたが,度重なる台風の接近・通過に備えて,大きく茎が伸びた「ひまわり」が折れたり,倒れたりすることのないよう,支柱を立て,綱を張るなどしたことでした。これらの一連の作業は,竹田廣見補導員(77歳)の指導の下で,多くの寮生が進んで取り組んでくれました。青空に向かって,元気に大きく伸びていく「ひまわり」の姿に,自分たちの自立更生の姿勢を重ねるかのように,必要な作業に労を惜しむことなく積極的に取り組んでくれました。こうした献身的な行動を目の当たりにしながら,私は,施設長として,寮生の施設生活における協調的で明るく和やかな雰囲気を感じ,うれしく思うとともに,今後とも全職員と協力一致して,いわば「住み良い家庭的な雰囲気」の施設づくを目指して,その一層の充実化・拡大化を図っていくよう,努力を続けていきたいと考えました。
 そして,いつの間にか,この「ひまわり」が咲く花壇に名前が付けられました。それは,地域社会へと伸びていく,広がっていく,つながっていくという「更生保護活動」の意味を強くイメージして,「みんなのひまわりロード」と名付けられたものですが,当保護会における前記の農園作業をはじめとする施設運営に熱心に協力してくれている一方で,当保護会内の地域交流室において,毎週,仲間とともにカラオケを楽しんでいる地元の中村佐智子さん(73歳)が「ひまわりロード」と命名されたものに,私が「みんなの」を冠して決定されたものです。
 こうしてできあがった「みんなのひまわりロード」のお陰で,幾つかの大きな変化が生じました。それは,一口に言って,それまで施設の前の道路をただ歩いて通って行くだけであった地域の人々が,足を止めてじっくりと「ひまわり」を観賞したり,振り返って「ひまわり」を眺めながら通行したりなどすることが多くなったことです。つまり,「ひまわり」を見ながら施設の建物をも見てくれて,その存在を知ろうとしてくれており,このため,地域住民の方々との距離がぐっと縮まった感がありました。
 さらに,もっと顕著な例を紹介しますと,7月1日(月)のことですが,当該道路上で初老の御婦人がお孫さんと思われる1歳ぐらいの男の子を抱っこして「ひまわり」を見物していたので,私が声をかけると,「向こうの方に住んでいますが,こちらで「ひまわり」が立派に咲いているという話を聞いて,この子に見せてやりたくてやって来ました。素晴らしいですね。背丈の低い「ひまわり」は良く見かけますが,こんなに背丈が高く,大きな「ひまわり」は初めて見ました。何よりも元気なのがいいですね。この子も元気に育ってほしい・・・・・・。これから全部が咲くのが楽しみですね。」と話してくれました。また,同日には,松山市内の中心街において,約400人の更生保護関係者らが参加して,第69回の“社会を明るくする運動”の街頭宣伝パレードが行われましたが,その際に,愛媛県更生保護女性連盟の近藤直子会長(68歳)が当該「ひまわり」1本を手に持って行進をされ,多くの通行人から注目を集めると言ったことがありました。
 そのほか,7月の中旬になって,近隣ののぞみ保育園の園児23人が先生方に連れられて写生大会の準備のために見学に来られ,施設周辺にかわいらしいにぎやかな声などが盛んに上がっていたことがありました。また,アマチュアの画家がわざわざスケッチをしに来られて,見事なデッサンを描いてくれて,前記の園児たちの写生とともに前記の地域交流室に展示してくれたことなどがありましたが,このようなことは,「ひまわり」が咲いていなかった当時(前年度以前)には,全く考えられなかったことです。
 最後に,更生保護施設の存立や運営のためには,地域住民の理解と協力を得なければ十分な効果を挙げることができないと言われ,もとよりそのとおりですが,そうした地域住民の理解等を得ることは,この度の「みんなのひまわりロード」の開設に見られるように,更生保護事業を行う関係者の工夫と努力によって,何とでもなるものであり,したがってまた,必ず実現するものであることを付言しておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/8/8 木曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 15:17:30

               愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 今回も,前回のBLOGに引き続いて,司法修習生の感想文として,本年5月14日(水)に当保護会を見学された第72期司法修習生(第3クール第4班)5人による感想文を掲載いたします。
 なお,感想文中の「雄郡寮」は,愛媛県更生保護会の通称であることを申し添えます。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 E
 「今日は仕事早く終わったんですね。」「はい,そうなんです。」「じゃあゆっくり休んでください。」「ありがとうございます。」寮生が照れながらも生き生きとした語り口調で施設長と会話していた姿が印象に残った。
 更生保護施設を見学する前に,名訓戒と吾作という話を教えてもらった。いくら犯罪者が改心したところで,社会に戻るところがなければ本当の更生は実現されない。犯罪者が立ち直るために必要なのは,本人の決意と,犯罪者を受け入れる社会であり,その一助として更生保護施設は作られた。私はこの話を聞いたときに,受け入れる社会とはすなわち,生活するところ,仕事であるから,更生保護施設は,仕事をするための本拠地としての生活の場を提供しているのだな,という程度のイメージしか持たなかった。しかし,施設長の話を聞いたり,寮の見学をするにつれて,犯罪者が寮を出てこれから一人で生活し,本当の更生をするためには,仕事と生活の場を満たすだけでは足りず,精神的に満たされていることが一番重要なのだということに気づいた。施設長は,いかに寮生の自己肯定感を高め,生きがいを作ることができるかを日々考えていた。寮生に接するときは,誰かが自分のことを考えてくれている,自分を認めてくれている,と思ってもらえるように接していた。更生保護施設はもともと犯罪を犯した人が住んでいるところなのに,施設の周りに家が建つとそれを買う人がいること,地域の人が寮生の農園作業を手伝ってくれること,太鼓の演奏に感動してくれる地域の人がいること,これらは全て,自分が社会の人に受け入れられているという自己肯定感を高めるものだ。このような自己肯定感は,これから彼らが社会に一人で戻ったときに,心の支えとなるものではないだろうか。
 また,高齢者や知的障害者の寮生を社会の福祉サービスにつないだり,そのような寮生との接し方について外部の講師を招いて勉強会を開いたり,薬物依存者に対してのケアといった取組をしている話を聞いた。職員の方は,どうすれば寮生のためになるのかを日々考え続けて,熱意をもって活動されていること,そしてこのような職員の方の熱心な取組があってこそ,地域の理解が得られて,寮生も生き生きと生活できているのだと感じた。

 

   雄郡寮の皆様から教えていただいたこと
                 第72期司法修習生 F
1 私たちは,令和元年5月14日,愛媛県更生保護会(雄郡寮)を見学させていただいた。見学を経て,多くのことを勉強させていただいたのであるが,その中でも強く印象に残っているのは,①更生には,自己肯定感を与えることが必要であるという施設長のお話,②雄郡寮が住宅地に囲まれていたこと,③施設長を始めとする職員の方の熱意の3点である。
2 ①について,施設長は,更生させるためには,居場所(住居)と出番(就労)を与えるだけでは不十分で,加えて自己肯定感を与えることが必要である旨お話しされていた。かかる考えは,施設長が長年にわたって矯正とそれに続く更生保護の仕事に携わってこられたご経験から帰納されているものであるという。
  刑事政策に関心をもって勉強してきた身としては,大変興味深いお考えであると感じた。たしかに,私たちは,当然のように帰る家があり,当然のように仕事をし,日々活動する中で,自己肯定感を抱きながら生活している。多くの人にとっては当たり前と感じることであっても,その当たり前の中に大切なことが詰まっているのかもしれない。
  雄郡寮では,入寮者に自己肯定感を与えるための活動として,地域住民の方と共に農園作業に取り組んでいるという。地域住民の方と共に作業することで,地域から受容されていることを実感し,また育てた農作物がどこかの食卓に並んでいることを想像することで,誰かの役に立つ喜びを感じることができるであろう。かかる取り組みが入寮者の自己肯定感に繋がり,更生へと結実することを祈っている。
3 ②について,雄郡寮を訪問する前の私は,更生保護施設は,住宅地から離れた場所にあるものだと想像していた。松山刑務所は,街中を外れた山の方にあるから,更生保護施設もこれと同じような場所にあるのだろうと想像していたのである。しかし,私の予想は大きく間違っていた。雄郡寮は,周囲を住宅地に囲まれていた。施設内から周辺住宅を,また周辺住宅から施設内を見通すことができるほど近い距離に,両者は位置していた。しかも雄郡寮は,住宅地の並ぶ景色になんら違和感を残すことなく,溶け込んでいたのである。
  この点について,施設長は,近隣の方々の理解と信頼のおかげで,雄郡寮は成り立っている旨お話しされた。しかし,近隣の方々が雄郡寮に理解を示し,信頼を寄せてくれるのは,まさしく施設長を始めとする職員の方々の真摯な取組や,入寮者の方々の行いの積み重ねによる賜物ではないかと思う。職員の方々と入寮者とが一丸となって,更生に向けた取組を長きにわたって続けてきたことかが,今の雄郡寮を成り立たせているのである。職員の方々や入寮者の方々の努力に思いを致すとき,その覚悟と気概に,感服の念を抱かずにはいられない。
4 ③について,職員の方々が熱意を持って仕事にあたられていることは,施設長のお話からすれば,火を見るより明らかであった。その他にも,「雄郡寮たより」や,「愛媛県更生保護会BLOG」を拝見したが,その隅々に余りあるほどの熱意を見て取ることができた。
  他者の更生に携わるというのは,実に苦労の多いことであると推察する。なかには心理的に不安定な者や危害を加えようとする者を相手にすることもあるであろうし,更生を期待した者に裏切られることもあるだろう。そのような中にあって,かかる仕事に携わり続けることは,確固たる覚悟と余りある熱意がなければできることではない。雄郡寮で働く職員の方々を目の前にして,刑事司法に携わる者としてどのような心構えでいるべきかを思い知った。
5 大変恥ずかしい話であるが,法律家になろうとする身でありながら,私は,更生保護施設について詳しく知っているわけではなかった。しかし,今回の見学を通じて,更生に向けられた活動としてどのようなものがあるか,どのような思いで活動されているかについて,その一端を知ることができた。ここで得た学びは,今後,どのような法律家になりたいかを考える一助となるであろう。かかる貴重な学びを与えて下さった関係者の方々に,感謝したい。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 G
 本日は,松山市内にある,更生保護施設,雄郡寮にお邪魔しました。検察修習が始まってから,矯正施設である刑務所の見学はさせていただきましたが,更生保護施設を見学させていただくのは初めてのことでした。
 雄郡寮を見学させていただいた際,第一に印象的であった点は,地域社会の中に強く馴染んでいるという点でした。刑務所を見学させていただいた際は,その空間が閉鎖的であり,管理監督の点から種々の制約があるなと言う印象を強く持ちましたが,雄郡寮は住宅地の中にひっそりと存在し,施設内の設備を地域の住民の方々に開放しているということで,そのように地域社会の中に溶け込んだ形で更生保護施設があることには驚きました。それだけでなく,入寮者の方が地域の方と野菜の収穫をしたり,お祭りを行ったりと,地域のコミュニティと近接した形で更生の道を歩んでいることは印象深かったです。
 また,施設長の方より,雄郡寮や,現在の更生保護制度について,更には雄郡寮での更生保護のやり方等について講義していただきました。その中で最も印象的であったのは,更生保護においては,矯正の視点ではなく,社会福祉の視点で「自己肯定感を高める取組」が求められるというお話でした。刑務所見学においても,出所後,就職難等から「どうせ自分なんて」とか.「自分の居場所がない」と考え,再び犯罪に走ることが多いこと,矯正施設である刑務所が更生保護に関わることができる部分は限られているとの話を耳にしました。そうだとすると,矯正の視点ではなく,社会福祉の視点で更生保護に当たる,雄郡寮のような更生保護施設の果たす役割は大きなものであるなと感じました。それと同時に,出所者等が再び犯罪の道に走らないようにするためには,上記のような自己否定感を払拭させることが重要であると思いました。その点,雄郡寮では,地域社会への貢献やコミュニティとの共生を通じて自己肯定感を確立させ,更生への道を歩めるようにしているとのお話を伺いました。このようなスタイル,考え方には深く共感致しましたし,多くの出所者等に浸透すれば,再犯率の低下に繋がるのではないかと考えました。それと同時に,我々一般人も,「更生したい」,とか「やり直したい」と考えている人がいれば,「犯罪者だから」などと偏見を持たず,適度に彼らと関わり,共生に協力することも時として必要であると感じました。犯罪歴のある人と関わりたくないと考えること自体がおかしいとまでは思いませんが,彼らが「何とかやり直したい」と前向きに考えている以上,できる限りそれに協力することが行く行くは再犯率の低下,社会全体の幸福の増進に繋がるのではないかと考えました。
 また,このような更生保護施設の取組が実効性を帯びるためには,我々法曹界に属する者がこれらの取組を正確に理解することが不可欠であるとも考えました。法曹が更生保護に関わる部分はどうしても限定的になりがちであると思いますし,それを根底から変えることは困難であると思います。しかしながら,更生保護の考えや取組を正確に理解していれば,当該事件についての刑事手続に法曹が関わる段階から,再犯防止や更生の点を念頭に置いて被疑者に関わることができると思いますし,被疑者にとっても再犯防止,更生への道が開かれるのではないかと思います。更生保護の分野においては,当該分野の専門家や職員の方に全面的に委ねるのではなく,他の分野,刑事手続に携わる種々の分野の人々の協力が不可欠であると考えました。
 加えて,今回の見学においては,雄郡寮の内部も見学させていただきました。更生保護施設内を見学することなどこれまでなかったので,貴重な経験となりました。そして,施設の中では入所者の方が自然な感じで過ごされている様子がうかがえました。現在,検察修習において,種々の犯罪の形態を見ることが多いので,せめて現在入所されている方,これから入所する予定の方は二度と犯罪に走らないでもらいたいとの素朴な感情も抱きました。
 今回,更生保護施設という,日常生活ではあまり馴染みのない施設を見学させていただき,更生保護の実務がどのような理念や方法で動いているのか,その触りを学ぶことができたと思います。これから法曹の実務家となる上では,単に法律の知識や事件処理の記述のみならず,このような,更生保護分野の方々の取組や考え方をできる限り正確に理解し,自らの職務を遂行することが重要であると思いました。そのように法曹界に在籍する者が更生保護分野を正確に理解することこそ,更生保護制度を実効性たらしめる第一歩になると思いますし,再犯率の低下に繋がるのではないかと思いました。今回見学を通して学ばさせていただいたことを今後の修習に生かし,一日でも早く一人前の有能な実務家になれる様に精進していきたいと考えております。本当にありがとうございました。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 H
 更生保護施設という施設について,そのような施設があるということは知っていましたが,執行猶予や仮釈放となった人が,その後どのような生活を送るのかという点は,今まできちんと勉強する機会がありませんでした。
 今回見学させていただき,更生保護施設の活動内容や施設利用者の生活状況について詳しく知ることができました。
 まず,施設利用者の更生を成功させるためには,居場所・出番・自己肯定感が必要であるとの考えから,更生保護施設を出て,一人で生活するようになったとしても,自らこれらを得られるような支援活動を行っているとのことでした。
 居場所を確保するに当たり,居場所となる共同体のルールを守ることが必要となるから,更生保護施設でも生活のルールを定め,これを遵守するように指導しているとのことでした。共同体のルールを守ることというのは,当然のことと思っていましたが,これまでの人生経験から,そのような習慣が身に付いていない人や,これまで刑務所で過ごしていたため,今の共同体のルールがよく分からないという人もいると知り,当たり前のことから確認し,必要な手当をしていくことの大切さを知りました。
 また,出番を確保するに当たり,就労が可能な人に対しては,ハローワーク等へ行くように指導し,ほとんど全ての施設利用者が就労先を見つけて働いているとのことでした。また,働く意欲はあるが,高齢者で就労先が見つからないという人に対しては,近所の農家へのお手伝いを紹介するなど,どこかしらで何らかの出番を確保できるように工夫していることを知りました。地域の理解がなければ,近所の農家からお手伝いを募集しているというような話も回ってこないであろうことを考えると,地域の理解を得るために積極的な活動をしていることを知りました
 さらに,施設利用者が自己肯定感を得られるように,施設利用者が地域住民に受け入れられているとの実感を持ってもらうために,地域のお祭りの準備で施設利用者が太鼓を披露する,高齢者教室に出席する,自家農園を始めるなど地域社会との交流を図り,施設利用者が社会に受け入れられているという実感を持ってもらう活動をしているとのことでした。残念ながら,犯罪を犯した者が,近所に住んでいるのは嫌だと思う人も少なからずいるとは思いますが,雄郡寮の近所では,施設利用者であるからといって排斥すること無く,受け入れてもらえる関係を構築できており,そのような信頼関係を構築すべく努力した施設長はじめ職員の方の努力に感動しました。
 また,各施設利用者の問題点に着目し,個別的な支援も行うようにしているとのことでした。
 例えば,施設利用者の中には,これまでの金銭の使い方について問題があったから犯罪を起こしてしまったという人もおり,金銭の管理・使用に関する教育をするということもしているとのことでした。また,精神上の病気であるが,これまで何らかの理由で通院してこなかった人に対して,通院の付き添いをして,通院を習慣づけることや,一人で生活するようになったときに,経済的な理由から通院を辞めてしまうことのないように各種支援の申請等も行っているとのことでした。さらに,今後も施設利用者の性質や需要に応じて,支援のプログラムを増やしていく予定であると聞き,施設利用者の更生支援に全力で取り組んでいると感じました。さらに,施設利用者の更生に必要であれば,職員のほうでも積極的に新しい知識を得るようにしているとのことでした。例えば,精神に障害がある人に対して,どのように対応をすれば,良いかを学ぶため,児童自立支援施設の人から講義を受けるなど,必要だと感じたらすぐにやっているのは,熱意がなければ難しい活動だと感じました。
 さらに,施設内を見学した時,何名かの利用者とすれ違うこともあったが,誰もが,大きな声で挨拶をしており,各利用者が,更生に向けた決意と努力をしていると感じ,更生保護施設の可能性を強く感じさせられました。
 各施設利用者の特性に応じた処遇を十全に行うことは,大変難しいことではありますが,雄郡寮では様々な工夫をして,その人が今後社会内で更生していくために必要な支援を惜しみなく行っていることを知りました。今後法曹になるにあたり,更生を支援して社会とつなぐことが欠かさず重要であるという視点を忘れないようにしたいと思います。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 I
 再犯防止について,以前より関心があったため,今回の更生保護施設見学は非常に有意義だった。再犯防止に向けて現場でお仕事をされている方のお話は,普段聞くことのできないものであり,知見が広がったように感じる。
 更生保護施設と聞くと,明るい雰囲気を持たせようと努力はしているが,やはりどうしても陰があったり,地域からは少し孤立してしまっているのではないかと思っていた。しかし,実際には,施設内の対象者達は,私達とすれ違う度に気持ちのよい挨拶をしてくれたり,喫煙所で対象者同士で和んでいたりと,ちゃんと明るい雰囲気で生活できているようだった。また,施設の目の前には真新しい住宅が建っており,これは,当該施設の存在や内容を知った上で,住民が入居したとのことだった。今月末には,施設内での催し物があり,そこには近隣の中学生や幼稚園児も演者として参加するそうである。これらは,地域住民が当該施設を排除しようとしていないことの表れであると思う。社会の人々は,どうしても,対象者に対してネガティブなイメージを持ってしまい,特に,近隣住民は,更生保護施設についても地域から排除したいと考えてしまうのではないかと思っていた私にとって,良い意味で非常に刺激を受ける経験となった。
 施設長のお話で,再犯防止のためには,「居場所」と「出番」(役割)に加え,「自己肯定感」が必要であるというものがあった。これまで,再犯防止には,居場所と役割が必要であるとしか考えていなかったが,自分に置き換えてみれば,いくら居場所や役割を与えられたところで,自分の役割に満足しておらず,やらされていると感じているのみだとすれば,きっと再犯・再非行に走ると思う。そのため,このお話は非常に納得できるし,今までこのことに気付かなかった自分の考えの浅さにも気付かされた。
 今回の見学で,良い意味で施設に対する印象が壊され,また,再犯防止について考え直す良いきっかけとなった。今回の経験を活かし,私もより良い社会を作る一助となれるよう頑張りたい。貴重な経験をさせて頂き,ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/7/25 木曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 17:55:43

              愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 本年3月13日(水)午後3時から同4時30分まで,当保護会において,第72期司法修習生(第2クール第3班)4人による施設見学が行われました(なお,今回から,それまで午後3時30分から同4時30分までの1時間であった見学時間が,このように1時間30分となりました。)。
 言うまでもなく,司法修習生とは,司法試験に合格し,裁判官,検察官,弁護士となるために,最高裁判所から命じられて法律実務を修習している人たちのことですが,最も難しいと言われている国家試験を突破した人たちだけに,直感的な観察力や鋭い洞察力,優れた感性等を身に付けていることに,私は,その人たちの施設見学を通じて,それら将来の法曹を担う優秀な人たちから,毎回新鮮な感動を覚え,大いに刺激を受けています。そして,このことはまた,これからも同じであると思っています。
 今回も,4人の司法修習生の人たちには,私の,施設の概況や更生保護事業の実際の運用状況等に関する講話を熱心に聴いていただくとともに,施設内各所を隈なく見学していただきました。とりわけ,講話の中で述べた,刑務所出所者等の立ち直りのために必要不可欠な「自己肯定感」を高めることについて,大きな関心を示していただいたことは,望外の喜びでした。
 ところで,この「自己肯定感」を高めることについては,本BLOGでも何回も紹介していますとおり,私が寮生(被保護者)の指導・支援等に当たって最も力を入れているものの一つですが,なお,このことに関連して,本年1月30日(水)に当保護会を御視察された小川新二高松高等検察庁検事長から,御視察後にいただきましたお手紙の一部を,恐れ多いことですが,御了承を得ましたので,引用させていただきますと,「出所者・出院者のそれぞれの背景や特性を踏まえた働きかけを行うことで「自己肯定感」を持たせていこうという雄郡寮の取組みは、再犯防止のためにもっとも重要なポイントを押させた取組みであると感じています。」ということです(なお,「雄郡寮」とは,愛媛県更生保護会の通称です。)。
 それでは,以下,上記4人の司法修習生の感想文を掲載させていただきます。
 なお,同検事長は,「先日司法修習生が見学にお邪魔した際の様子もブログで拝見しましたが、今後も、松山地検を始め、検察・法務の関係機関がお世話になりますが、引き続きよろしくお願い致します。」とも仰せられていることを付言しておきます。

 

   雄郡寮を見学して
                 第72期司法修習生 A
 今回,私たち修習生一同は更生保護施設である雄郡寮を見学させて頂く機会に恵まれた。これまで,更生保護施設について詳しく知る機会もなく,犯罪者を更生させる施設という字面だけ見ると刑務所のような要塞然とした施設を想像していたが,実際に見ると本当に普通の住宅街の中にある普通の建物であったので驚いた。
 驚きながらも雄郡寮に入ると,施設長の松田辰夫さんが出迎えてくださり,そのお話をうかがった。松田さんは元刑務官として41年間矯正に携わってこられたそうだ。刑務官というと受刑者を厳しく指導・監督するイメージがあり,犯罪を犯してしまった人たちと向き合い扶けるという更生保護のイメージとは正反対であったので意外であった。また,松田さんは,更生保護には福祉の視点が必要と考えておられ,社会福祉士の資格も取得されているということで,その情熱には驚いた。一体,その情熱はどこから湧いてくるのだろうかなどと私なりに考えたが,やはり,長い刑務官人生の間で多くの受刑者を受け入れ,送り出すことを繰り返していれば,時には戻ってくる者もいたであろうし,そういう仕事をしていると,なんとか更生させたい,二度と刑務所に戻ってきて欲しくないという気持ちが湧くのかなと思う。
 松田さんのお話しの中で印象に残っているのは,更生には「居場所・出番」と「自己肯定感」が必要だという点だ。これまでの修習で刑事裁判を数多く傍聴してきた身としては,出所後の住む所の確保や就職のあてなど「居場所・出番」の重要性は裁判でもよく問題になっているので知っていたが,「自己肯定感」という視点は全くなかったので新鮮だった。なるほど確かに,いくら家と仕事があっても結局本人がしっかり立ち直らないと再び犯罪を犯すことは避けられないだろうし,それならどうすれば立ち直ることができるのかと考えれば,その答えは松田さんのおっしゃる「自己肯定感」なのかもしれない。松田さんは,寮生が朝出かけたり夜帰ってきた際の声かけを大事にしているとおっしゃっていたが,そのような小さなことの積み重ねが寮生の自己肯定感を育んでいるんだろうなと思う。他にも地域に受け入れられている雄郡寮だからこそであるが,地域の人を呼んでのイベントなど外の人との交流の機会が設けられていたり,仕事ができない寮生も何か貢献できるようにと農園を運営したりと,「自己肯定感」というしっかりした視座があるからこその運営をされており,このような施設に入れる人たちは幸運だなと思う。
 今までは裁判で裁かれて刑務所に入った人たちのその後のことはあまり考えたことがなかったが,これからは更生保護も含めて,法曹としての立場から「その後」を考えたいなと思う。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 B
 私は,今まで,更生保護施設という存在について,名前は知っていてもそこで具体的に何をしているのかということやどのような施設なのかという点に関してはきちんとわかっていませんでした。そのため,今回の愛媛県更生保護会を見学させていただいて非常に多くのことを学ばせていただいたと思います。
 まず,見学に際しては,初めに松田施設長が施設の概要や目的などを教えてくださったのですが,施設長が更生にかける熱意や展望について非常に深く考えておられるのがとても印象的でした。
 再犯防止の観点からみても,犯罪を行った人の保護観察後,出所後の社会復帰は社会的に重要なファクターであるにもかかわらず,周囲の環境や世間の目など上手くいかないことも多々あると思います。しかしながら,愛媛県更生保護会では,入寮者が,社会復帰後に地域ではじかれることなく溶け込んで暮らしていけるように,更生保護会の周辺住民との交流を図る活動を行っており,一人一人の自立をよりリアルに考えておられました。
 やはり過去に犯罪を行った人に対する世間の目は厳しいものがあると思われますが,愛媛県更生保護会では,地域住民の所有する田んぼを耕して野菜を栽培するなどしており,施設の方々の努力もさることながら,周辺住民の方々の更生施設に関する理解がとても深いように感じました。
 施設内は,日当たりがよく清潔に保たれており,ゴミの分別の徹底や,洗濯,掃除など,入寮者が施設を出てからも一人で日常生活を送れるような体制が整っていました。また,体育館では朝の体操やカラオケなども催されるようで,入寮者の身体的にも精神的にも前向きになれるようなものでした。
 過去に犯罪を犯したとしても,保護観察や刑期を終え,しっかり更生が完了した人は,世間一般の人々と何ら変わりありません。そういった人々が,再度犯罪に染まることなく生きていくためには,愛媛県更生保護会のように教育的更生が不可欠であると痛感致しました。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 C
 私達は,松田辰夫施設長の案内のもと,更生保護施設「雄郡寮」の見学をさせていただいた。
 まず,雄郡寮に到着してから,松田辰夫施設長の講話を受けた。刑事裁判の手続の中でも,更生可能性を考える際には,引受人や職業の点にスポットが当てられるイメージを持っていたが,それだけでは不十分であり,松田施設長は更に,「自己肯定感を持つこと」をキーワードとして強調されていたことが印象に残っている。
 私は,更生保護施設と聞いて,どこか世間から離れた場所で,更生プログラムを行う場所と思っていたが,雄郡寮は住宅街の真ん中にあり,地域との融和を体現していると思った。
 また,一般市民の住居に近い場所に所在しているというだけでなく,雄郡寮では,カラオケの大会,ふれあい農園ひまわりでの作業など,寮生と近隣住民が交流をするための取り組みが頻繁に行われていることにも驚いた。特にふれあい農園ひまわりで作られた野菜は,寮での食事にも使われるということで,作業に当たった寮生の仕事・努力が,具体的な形になって,成果として現れ,そして食べている人を目の当たりにすることは,強い自己肯定感に繋がり,とても良い取り組みだなと感銘を受けた。私達が雄郡寮を見学した際には,すぐ隣に家が数軒新築中であり,近隣の方々の,更生保護施設に対する理解の上に,雄郡寮の活動も成り立っていることを感じた。
 雄郡寮を見学して,更生・更生保護施設という施設に対し,自分が今までどのように考えていたか,また,その考えと現実がどのように違っていたかなどを考える貴重な機会になったと思う。私が実務家として活動する際にも,今回の松田施設長の講話や,自分が施設内で見て体験したことを活かし,更生につなげて行けたらと思う。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 D
 先日,検察修習の一環として,愛媛県更生保護会の保護施設である「雄郡寮」を訪問させていただいた。
 見学に先立ち,松田辰夫施設長から,施設の沿革や,更生保護のあり方,寮生の生活などについてお話いただいた。施設長は,「居場所」と「出番」に加えて,「自己肯定感」を与えることが更生に不可欠であると強調しておられた。お話の中で,犯罪者として社会から排除された者達は,私たちが普段当たり前に行っているふとした会話や挨拶もなく,孤独の中で生きているのだということを感じた。そして,この孤独感こそが彼らの顔つきをこわばらせ,再犯を招いてしまうのだということがわかった。犯罪者に対する世間の目は厳しいが,犯罪者の気持ちに寄り添える社会になってほしいと強く思った。
 更生保護施設は,山中にひっそりと佇んでいるようなものだと思っていたが,雄郡寮は住宅街の真ん中にあり,驚いた。民家が隣接しており,居室からは外で遊ぶ子ども達の笑い声が聞こえてきた。近隣住民が,寮生に恐怖感を抱いている様子は全く感じられず,雄郡寮はまるで住民が集う公民館や図書館のように地域に馴染んでいた。施設内は,木の温かみが感じられる開放的な造りとなっており,私たちが訪問した夕方頃には,食堂で夕食の支度が行われていた。施設長に声を掛けられた寮生が,穏やかな笑顔で応えているのが印象的だった。
 寮生の年齢や経歴は様々であり,中には障害を持った者もいる。雄郡寮では,各寮生と丁寧に向き合い,それぞれの個性や強みを引き出す努力がされていた。太鼓が得意な寮生に,太鼓を披露する機会を用意したところ,自信につながり,前向きに更生の道を歩き始めたという具体例もお聞きした。職員の皆様方の情熱に大変感銘を受けた。
 法曹が刑事事件に関わるのは基本的には判決までである。しかし,判決が確定した後も,犯罪者の人生は続いていくのであり,再び社会に受け入れられるのは簡単なことではない。犯罪者のその後の人生にも思いを馳せながら,刑事事件に関わっていきたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/6/30 日曜日

「第15回雄郡寮ガレージセール」開催される

Filed under: ブログ — admin @ 12:04:00

               愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 松山市土居田町における初夏の恒例行事である「第15回雄郡寮ガレージセール」が,去る5月26日(日),愛媛県更生保護会(通称「雄郡寮」)の駐車場,地域交流室及び会議室を会場に,盛大に開催されました。
 このガレージセールは,「雄郡寮と地域の住民との交流を深め,誰もが心豊かに生き,安全な地域社会づくりを目指す。」というコンセプトの下で,当保護会及び松山地区更生保護女性会の主催により,当保護会の事業運営に協力と援助をしてくれている17の機関・団体・個人の参加を得て.バザー等を催して地域住民の方々と触れ合い,当保護会の施設運営及び更生保護に対する理解と協力を深めることを目的として開催されているもので,本年で実に15回を迎えています。
 当日は,五月の晴れ渡った青空の下で,会場の駐車場等は早朝から開場を待つたくさんの来場者で混雑し,当保護会で生活している寮生(被保護者)の立ち直りのための協力や支援等は,このような地域住民の温かい支えや励ましなどによって成り立っていることを強く実感することができました。
 午前9時30分から来賓6人の御挨拶がなされた後,地元の雄新中学校吹奏学部54人による演奏(「平成メガヒットコレクション」,「パブリカ」等3曲)と,本年度から参加されたのぞみ保育園の園児たち19人の踊り(「子ども八木節踊り」)でオープニングして開場となりました。そして,多くの来場者でにぎわう中,善意の,更生保護を支える熱意にあふれた各層の人々による多彩な催事等が行われましたが,その模様を一言で表現すれば,それは,地域に支えられ,地域に根ざした活動が展開されたということであり,地域との共生を実現する上からも,大変有意義なものになり,午後1時30分に盛況のうちに終了しました。
 なお,全寮生19人中の11人がグループに分かれ,駐車場案内及びビンゴゲーム等の応援スタップとして参加しましたが,それぞれ熱心に来場者に対して案内や景品の配付などを行っていました。これらの寮生は,こうした活動を通じて懇切な言葉遣いやマナーを守りながら嬉しそうな表情で対応しており,一人ひとりが地域に受け入れられていることをしっかりと身近に感じ,自立更生に向けた大きな励みになったものと思われます。
 また,今回,初めて来場者からアンケートを取らせていただきましたので,そのうちの幾つかについて,当保護会の広報誌「雄郡寮たより」(第49号 令和元年7月1日発行)に掲載したところです。
 ちなみに,前記のコンセプトは,本ガレージセールの基本理念を更にわかりやすくするため,昨年度(平成30年度)からチラシの中に刷り込んでいるものですが,このことはまた,現在,法務省保護局を中心に議論が行われている「更生保護事業の在り方の見直し」(なかんずく,「更生保護の地域連携の拠点となる方向性」)に関連して言えば,本ガレージセールの会場に充てた地域交流室や会議室等では,そのほかに,地域における保護司会,更生保護女性会,BBS会,協力雇用主会,就労支援事業者機構等の会議や研修会,勉強会,ミニ集会その他の行事等の開催等をはじめ,司法修習生の見学等が行われているなど,更生保護関係機関・団体等との連携・交流を図り,意見を交換する場となっており,当保護会は,正に,「地域連携の拠点」となっていると言っても過言ではありませんことを申し添えます。

 

 

       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/5/31 金曜日

幸 せ の 意 義

Filed under: ブログ — admin @ 15:36:54

              愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 平成の時代が終わり,令和の時代を迎えて,世間一般が新天皇陛下御即位の国家的慶事等で賑わっている一方で,凄惨な交通犯罪等が発生するなどしていたある日,当更生保護会の一人の寮生(被保護者)が近くのスーパーの店舗内で大金の入っている財布を拾って,サービスカンターに届けていたところ,その翌日に,落とし主から感謝の言葉と御礼の金品が贈られたという出来事がありました。
 彼(40歳代)は,決していわゆる「出来の良い」寮生ではありませんでした。性格や物の考え方に偏りが著しく,対人関係が良くないばかりか,酒は飲むし,門限は守らないなどの問題行動も多く見受けられましたが,しかし,根っからの「不良」でないことは分かっていました。
 ところで,平成の時代がどのような時代であったかについて,各方面の有識者などが種々様々な論評を行っていますが,その一つに「大規模な自然災害」が多数発生した時代であったことが挙げられています。例えば,東日本大震災,熊本地震,西日本豪雨等が発生し,想像を絶する甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しいところですが,古くは,雲仙・普賢岳の噴火や阪神・淡路大震災の発生なども思い起こされます。これらの天災事変によって多数の死傷者を出し,大切な人命や財産などが失われたほか,思い出の人々と品々とともに,楽しかった日々の記憶が奪い去られ,その後も深い悲しみを抱かせられ,悩まされている被災者等が多数存在することは,今日なお,新聞,テレビ等で報道がなされているとおりです。
 大切な人や物を失った悲しみ,亡くした痛みは,当事者に癒し難い長い苦しみを与え,いくら年月が経過したからと言って容易には人の心の中から消え去ることはないのでしょう。しかし,失った物,亡くした物が戻ってきたらどうでしょうか。もし,そうなれば,その人が失意のどん底から歓喜の絶頂へと一変するであろうことは,容易に想像されるところでありましょう。
 そう。失った物,亡くした物が戻って来ることがあるのです。前記の彼が届けていた財布が,落とし主の元に戻って来たのです。その時の落とし主の喜びは,いかばかりのことであったでしょう。大金のほかに,クレジットカードや保険証などが入っていたばかりでなく,強い絶望感に陥っていた気持ちが一気に回復したのですから,その喜びたるや,想像してあまりあるものがあります。
 このように,彼は,自分の不当な利益や偽りの喜びよりも,失った人の,亡くした人の喜びや幸せを何よりも優先したのです。拾った財布をねこばばしないで,サービスカウンターに届出をし,落とし主が見つかってその元に戻され,落とし主にひたすら喜んでもらうことに,自分の「幸せの意義」を見出そうとしたのでした。
 その後,彼は,寮則違反で処分されて不自由な寮生活を送っていましたが,それでも規則正しい生活をし,毎日仕事に行き,門限を守るなどしていました。そして,私が当直勤務をしていたある日,仕事から帰って来るや,「お帰りなさい。」と言って出迎えた私に,「施設長,これを職員の皆さんで食べてください。この前の御礼でもらったお金で買ってきました。」と言って,江崎グリコの「パピコ」1箱(ラクトアイス及び氷菓10本入り)を差し出しました。しかしながら,私が,「寮内規則で,こうした物を受け取ることができません。悪いけど返します。」と申し出たところ,「そんなことを言わないで,受け取ってください。施設長や職員さんのお陰で,僕は,徐々に立ち直っているのですから,・・・・・・。」と言い,「どうしてもだめなら,預かっていてください。」と言って,受付窓口のカウンターに置くようにして,自室のある3階へ上がって行きました。
 私は,階段を上がって行く彼の後ろ姿を見送りながら,彼が先の落とし主に感じようとしたと同じように,恐らく私たち職員に自分の「幸せの意義」(すなわち,他の人に喜んでもらうことが自分の幸せになること。)を感じようとしているのだろうと思うと,寮内規則に従って,無下に断ることができませんでした。
 このように,私は,こうした寮生たちとともに,この雄郡寮(愛媛県更生保護会の通称)で生活をし,仕事をしていることを,様々な苦労があるものの,大変うれしく,幸せに感じています。
 しかしその後,残念なことに,彼は,またもや寮内で酒を飲んだのでした。あれほど戒めていた寮内規則を破って,・・・・・・。たかが「規則」と見る向きもありますが,されど「規則」です。寮内規則を守らずしてはその自立更生を期することはあり得ないと言っても過言ではありません。もとより,人間の深層の心理の複雑的,多様的であるのは当然で,彼に,変わろうとして変わり切れない何かがあったことは疑いないところですが,私は,今もって「更生の難しさ」を感じながら,日々更生保護の仕事をしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/4/29 月曜日

あ あ 料 治 統 括

Filed under: ブログ — admin @ 13:25:07

               愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 犯罪を犯した人たちは,刑務所を出所した時から,仮釈放の対象者として,また,更生緊急保護の対象者として,あるいは,裁判が終わった時から,保護観察付執行猶予者などとして,再び犯罪を犯す可能性がある実社会の中で,社会からの拒絶反応を感じつつ,自助努力により,保護観察を受けながら自立更生の道を歩んでいかなくてはなりませんが,しかし,このようなことは,容易なことではなく,したがって,それら犯罪を犯した人たちが長く苦しい努力を続けていかなければならないことは,疑いないところであろうと思われます。そうした中で,そのような更生への努力を促し,更生を遂げさせるという困難な保護観察の仕事を民間人として行っているのが保護司であり,保護司の委嘱を受けている更生保護施設職員等であります。
 しかし,そうした困難な保護観察に携わることは,時に,心理的に不安定な対象者や危険性の強い対象者に加え,普段経験したことのない厳しい難局などにぶつかると,携わる者自らが気がくじけ,対処方法が分からなくなって,バーンアウトしてしまうことがあります。そのような時に,国家公務員として,民間の更生保護施設職員等をも含む保護司と協働して保護観察を行う国の職員に,更生保護に関する専門的知識及び技術を有する保護観察官がいます。どのような困難な事案等にも背を向けることなく,避けて通れない課題等にも正面から真剣に向き合って,民間人(保護司等)にアドバイスをし,彼らを励まし,勇気づけ,いろんな意味でスーパービジョンを行ってくれる保護観察官が存在することは,言わば当然であるとは言え,本当に有り難く,感謝して余りあるものがあります。専門的な知識と技術とともに豊富な経験を有している保護観察官が,その専門性及び積極性等を発揮し,種々困難で新たな事案等に関して,保護司や更生保護施設職員等を全面的にバックアップしてくれることほど,有り難く心強いことはありません。そして,そのような時にこそ,それら保護司等は,苦労は大きくても,更生保護の仕事に前向きに歩を進めて行こうという気持ちになれるものです。
 この点,本年春の定期人事異動により,松山保護観察所から高知保護観察所に転勤された料治謙一郞統括保護観察官(50歳。以下「料治統括」という。なお,転勤後の役職は企画調整課長。)も,また,そうした保護観察官の一人でした。
 ところで,当保護会(収容保護定員は20人)は,前年度(平成30年度)に収容保護率91.2%を記録しました。この過去最高の実績は,一人でも多くの被保護者を受け入れて,真に更生保護にふさわしい仕事を遂行することを目的に,全職員が一丸となって取り組んだ成果であり,全国的にも高い評価を受けました。しかしながら,このことはまた,私の立場から言えば,指導監督官庁である松山保護観察所,とりわけ,実際の担当者である料治統括の御指導なくしては,成し遂げられなかったところです。
 更生保護とは何か,私たちは何のためにこの仕事に就いているのか,一人の被保護者(元犯罪者及び非行少年等)と向き合う姿勢はどうあるべきか,苦労は誰のためにするのか,道を誤った被保護者に正常な社会性の回復を図らせるための仕事に従事する者は,どのような考え方を持ち,どのように行動しなければならないか,地域社会が全ての人々にとって(もとより,元犯罪者等にとっても)安全で住み良い社会となるために,今,ここにいる被保護者一人ひとりの問題性の解決に取り組み,地域の人々が彼らを理解して受け入れてくれるようになるために,私たち更生保護の実務に携わる者は,一つひとつの事案(ケース)をいい加減に扱わず,常に真剣でなければならないことなどを,料治統括は高い志を持って,いつも考えておられました。そして,そのような考え方と似通った私の考え方及び仕事の仕方とその方向性等を常に理解し,尊重し,後押しをしてくれました。このことをあわせ考えると,前記の収容保護率の実績は,ひとえに料治統括のお陰であると言っても過言ではありません。
 このような料治統括と出会って,1年6か月間一緒になって,職員ともども,幾多の問題を克服しながら,幾多の困難な時期を乗り越えて,当保護会が大きく発展と飛躍を遂げていくための仕事ができたことをうれしく思うとともに,大変有り難く思っています。そして,万感の思いを込めて,「ああ料治統括」という感謝の言葉を贈ります。ありがとうございました。新任地での更なる御活躍を祈念いたしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/3/26 火曜日

「雄郡寮ふれあい歌謡ショー」開催される

Filed under: ブログ — admin @ 13:39:27

               愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 去る2月24日(日)午前10時から午前11時50分まで,当保護会の地域交流室において,「雄郡寮ふれあい歌謡ショー」が開催されました。なお,ここで「雄群寮」とは,愛媛県更生保護会の通称であることを申し添えます。
 この歌謡ショーは,プロ歌手2人をお招きし,地域住民の参加を得て,当保護会の寮生(被保護者)が,それら住民とともにカラオケで歌を歌い,楽しみ,触れ合うなどして,地域社会との交流を深めることにより,地域社会の中に彼らの立ち直りの支援の輪が一層広がっていくことを目指して,企画したものです。言うまでもなく,刑務所出所者等の,更生保護を受けている被保護者に対しては,その自立更生を完成させるためには,ひとり更生保護関係者の力だけで足りるものではなく,広く地域社会や一般社会の理解と協力を得ることが必要不可欠だからです。
 当日は,約70人を超える地域の多くの人々が参加し,地域交流室は身動きする余地がないほどに満員となりました。そして,これらの人々によって,次のように盛大に開催され,大変意義深いものになりました。
 まず,地域住民及び寮生等13人による13曲の歌が披露され,その後,キングフォンレコードプロ所属歌手の自称「浪曲育ち」の山本安輝さんと,同じく「演歌姫」の茜つばきさんが10曲を歌われましたが,1曲ごとに参加者から盛んに拍手が送られるなど,正に「ふれあい」そのものでした。とりわけ,参加した寮生10人の代表者1人と元寮生1人が歌っているときは,会場にはその歌声にじっくりと耳を傾けて聞き入っている多くの参加者の姿があり,歌い終わったときには,一段と大きな拍手が送られましたが,その拍手が彼ら2人の自立更生を支援する大きなエールのように聞こえたのは,私だけだったでしょうか。当保護会は,こういった多くの地域住民によって支えられていることを改めて実感させられました。
 ここで参考までに,前記プロ歌手の2人について若干付言しますと,私が,彼ら2人と出会ったのは,平成23年度の長崎刑務所においてでした。私は,同年度,同所において処遇部長として勤務していましたが,当時,私は,高齢受刑者及び障害を有する受刑者の円滑な社会復帰を図ることをねらいとして,全国の刑事施設に先駆けて,「長崎刑務所における高齢受刑者等に対する社会復帰支援指導」の実施に着手したところでした(この,他にその例をみない独自の取組は,マスコミ等から「長崎方式」などと呼ばれました。)。その実施プログラムの二つの柱は,「社会復帰に資する知識等の付与」と「社会復帰に資する能力等の開発」でしたが,後者の指導内容の一つとして,「音楽療法(カラオケ音楽療法)」を取り上げ,カラオケ講座を開設し,これを通じて,高齢受刑者等が,出所後の地域社会において,カラオケ大会その他住民が参加する様々な行事に進んで参加する意欲を喚起し,ひいては,社会適応性をかん養することを目的としてプログラム化したもので,その実施を担当していただいたのが,長崎刑務所篤志面接委員の山本安輝さんでした。以来,山本安輝さんとその愛弟子の茜つばきさんには,その翌年度に私が転勤した高松刑務所をはじめ,幾つかの刑事施設にお越しいただいて慰問を行っていただき,たくさんの受刑者に感動を与え,更生意欲を高めていただきました。その後,私は,矯正の仕事を終わり,更生保護の仕事を始めましたが,彼らとの交友は,現在もなお続いています。
 ところで,この度の歌謡ショーを通じて,寮生や元寮生は,地域住民から「ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)」を,簡単に言えば,自分たちが受け入れられ支えられていることを実感し,その一方で,参加者からは,寮生や元寮生に対する温かい思いやりが示されたことはもとよりですが,参加されなかったものの,この企画の広報に接した地元のより多くの人々からは,これから,当保護会及び更生保護に対する関心が高まっていくことが期待されることろです。
 ちなみに,地域交流室等を会場にした毎年5月に開催の「雄郡寮ガレージセール」以外に,このようにたくさんの地域住民が地域交流室に集まってくれ,しかも,歌謡ショーを開催したことは,恐らく,今回が初めてのことでした。
 歌謡ショー終了後,参加した地域住民からは,「本当に楽しかった。十分に楽しませてもらいました。」,「寮生の方も歌が大変上手ですね。」,「私たちは,寮生の人たちと今日のようなお付き合いをしたかったの。ありがとうござました。」,「雄郡寮が,このように地元のカラオケ仲間の集まりの場になるなんて,考えてもいなかった。施設長さん,これからも頑張ってくださいね。」,「また,開催してくださいよ。期待していますので,・・・・・・。」などの声が寄せられました。

 

 

2019/2/28 木曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 13:33:04

              愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 平成24年7月に犯罪対策閣僚会議が「再犯防止に向けた総合対策」を決定しました。当時,私は,高松刑務所で処遇部長として勤務していましたが,この画期的な再犯防止対策の出現に胸を躍らせたことを今でも覚えています。しかしながら,その後,矯正とそれに続く更生保護の仕事をしていく中で,この総合対策の中の重点的な施策である「居場所」と「出番」の確保,つまり,「住居の確保」と「就労の確保」だけでは,再犯の防止は実現しないのではないか,何かが不足しているのではないかと考え続け,その結論として,私は,その不足を補うものとして,「自己肯定感」を高めるための取組を行う必要があるということに思い至りました。
 以来,私は,その取組方法を開発し実践してきました。そして,当保護会の施設長として,見学に来られる司法修習生をはじめ,保護司,更生保護女性会会員,大学生など様々な方に,再犯防止対策上の「自己肯定感」を高めることとその重要性・必要性について説明をし,理解に資するためにさらなる強調を行っている次第です。
 こうしたことから,本年1月30日(水)に見学に来られた「第72期司法修習生(第2班)」の方々に対しても,更生保護の理念や制度,施設運営の概況等について説明をし,その後に,前記の「「自己肯定感」を高めること」及びその取組についての具体的,専門的な説明をしたところ,司法修習生全員から多大な共感をしていただいた上,後日,松山地方検察庁を通じて,以下のような感想文が送付されてきましたので,その全文を掲載して,皆様方の参考に供することとします。

 そして,皆様方にも,これら司法修習生の感想文に見られるように,刑務所出所者等の立ち直りのために必要な「自己肯定感」を高めることに関する理解と関心を深めていただければ幸いに存じます。
 なお,感想文中の「雄郡寮」は,愛媛県更生保護会の通称であることを申し添えます。

 

   更生保護施設を見学して
                  第72期司法修習生 W
 1月30日水曜日,松山地方検察庁に配属中の修習生4名で,愛媛県更生保護会の保護施設「雄郡寮」を訪問させて頂きました。
 施設見学に先立ち,松田辰夫施設長から,施設の沿革や寮生の生活についてお話し頂きました。刑務官としての長年のご経験の後,「塀の中だけでは更生は実現しない」という思いから社会福祉士の資格を取得され,現職に就くに至ったという松田施設長ご自身の経歴や,施設の運営理念を伺い,日々受刑者の真の社会復帰のためには何が必要かということを批判的精神を持って考察してこられ,安全かつ安心な社会の実現への貢献をご自身の人生をもって実践してこられた松田施設長の深く温かな社会へのまなざしと強い信念に,大変感銘を受けました。
 また,施設内を見学させて頂いた際には,丁度食堂で調理員の方が夕食を作っておられ,調理員の女性の方の明るい表情や,作りたての食事の香りから,家庭的で大変穏やかで温かな雰囲気を感じました。
 松田施設長のお話のなかで,真の更生のためには「居場所」と「出番」に加えて「自己肯定感」が必要である,というお言葉が大変印象深く心に残りました。雄郡寮では寮生が多様な世代の地域住民と交流する機会が持たれており,なかでも特に,寮生が地域住民とともに農園作業に取り組むという創造的な試みは,まさしく,寮生が少しでも自己肯定感を獲得できることを目指すという施設の理念の実践であると思います。他者と共同して作業をする機会があることは,施設での生活と社会復帰後の生活の間隙を小さくし,被保護者の社会への適応を円滑化するうえで非常に本質的な意義を持つものであると感じました。
 雄郡寮におけるこうした様々な取組とその趣旨について学び,考えるなかで,個人の存在意義の自覚にとって根源的なものは,他者に必要とされている,他者に受け入れられているという実感であり,そのような実感は,規律を遵守した勤勉で清貧な生活態度だけでなく,他者との心通った交流があって初めて得ることができるものであると改めて強く認識しました。更生保護制度がいかなるものであるべきかを考えることは,究極的には人間にとっての幸福とは何であるのか,一人一人が幸福に生きることのできる社会の実現のために本質的に必要なことは何であるのかを考えることに通じるものであると感じます。そして,そのような考察の際に最も重要なことは,他者の考えや立場を尊重し,慮ることであると考えます。雄郡寮の施設運営の基調として「寄り添い,傾聴,受容」という視点が置かれているのは,他者理解の根底にあるべき精神を真摯に探求してこられた結果であると感じました。
 法曹という社会と深く関わる職に就く者として,社会に対する洞察と思索を深め,他者の心情や立場への想像を絶やすことなく,個々の事案に向き合ってゆきたいという思いを新たにしました。
 お忙しいところ,かけがえのない貴重な経験をさせて頂き,誠にありがとうございました。

 

   雄郡寮の見学により学んだこと
                  第72期司法修習生 X
 更生保護施設雄郡寮の見学を通じて,松田施設長の社会福祉への情熱と実際に更生保護施設がどのように運用されているのかを学ぶことができました。
 刑務官のご経験のある松田施設長のお話を聞き,印象に残ったことは2点あります。まず,更生保護施設は刑務所と同じく社会復帰や社会的更生を目的の一部としていますが,刑務所と異なり社会生活を営むことができることに意味があることを教えていただきました。例えばアルコール依存症の人がいる場合,強制的にアルコールを窃取できない環境とすれば摂取することはなくなります。ただし,強制的に更生できたとしてもその環境の外へ出た時に再びアルコール依存となる危険があります。一方,更生保護施設は社会の中で一般の方と同じように生活するため,アルコールが自由に手に入ります。更生保護施設は無理矢理依存対象を奪うのではなく,アルコール依存防止教育や施設の職員との生活の共同により,社会生活の中で依存対象と共存できるよう更生を促すことを教えていただきました。松田施設長のお話の中で強制することのない社会福祉のあり方を教えていただきました。
 二つ目として,施設利用者の再犯の防止のために自己肯定感を芽生えさせることを大事にしていることを教えていただきました。施設利用者は少なからず社会から常に偏見の目で見られており,その偏見が社会復帰への壁になるそうです。その社会復帰への壁を越えることができず,再犯をしてしまう人がいるということを教えていただきました。松田施設長は福祉の視点に立つ更生保護を実現するため,施設利用者の話を傾聴し,同じ目線で話を聞くことを大事にしているそうです。その中で施設利用者が社会に何を求めているのか,どのように役に立ちたいのかを一生懸命聞き,共に行動に移すことで利用者の自己肯定感を育むそうです。自己肯定感が芽生えることにより社会の一員であることを実感し,社会の役に立っているという気持ちが再犯の防止へと繋がっていることを学びました。
 最後に雄郡寮の中を見学し,利用者の方の生活環境を知ることができました。寮内はとても綺麗で生活しやすい様な印象でした。また喫煙スペースや談話コーナー,地域交流室等があり,施設の中で生活するだけではなく社会とのつながりを持つための環境が整っているように感じました。
 雄郡寮の見学を通じ,施設利用者の更生のために社会との繋がりを大事にしていることを知ることができました。このような貴重な機会をいただきましたことを非常に感謝しています。

 

   更生保護施設を見学して
                  第72期司法修習生 Y
 平成31年1月30日(水),更生保護施設を見学させていただいた。
 更生保護施設は「雄郡寮」という名前で,松山市の土居田町にある。雄郡寮は,犯罪を犯してしまった者達が更生できるように,居所,食事,生活,就労支援等を無料で支援する施設である。そうすることで,再犯の予防に繋がり,個人及び公共の福祉を増進するという,更生保護の目的の達成を促進する役割を担っている。そこには,見学当時,17人の罪を犯してしまった者や非行少年らが暮らしていた。
 私達が施設に到着すると,施設長の松田辰夫さんが迎えてくれた。そして,松田さんから,雄郡寮や更生保護についての説明があった。その際に松田さんが「偏見で人は崩れる,交流で人は変わる。」と仰っていたのがとても印象的だった。
 また,同施設では,地域のイベント参加や,菜園活動など,積極的に地域社会との交流をしているとのことだった。何らかの理由で地域社会の外に出てしまった者達が,地域社会の人の協力によって,また地域社会に復帰するというのは,とても素晴らしいことだと感銘を受けた。
 松田さんの説明の後,施設を案内して頂いた。まず始めに,食堂を見せて頂き,その後に居室,浴場,洗濯場,休憩スペース,地域交流室に案内して頂いた。施設内はとても新しく綺麗で,清潔感があった。また,各部屋にテレビがあったり,漫画なども置かれていたりして,生活感があった。社会内での更生という目的から,一般的な暮らしとの齟齬が少ないように工夫しているんだなと感じた。
 わたしは,犯罪者の再犯率はとても高いと聞いたことがあった。そのため私は,更生保護の制度が不十分でないかと思っていた。現場のサポートが足りないのではないかと考えることもあった。しかし,施設を見学してみると,施設長の松田さんは本当に熱心に更生保護を受ける者達のことを考えておられたし,更生保護を受ける者達も,挨拶を交わすなど,温和な印象を受けた。この人達が再犯に走るだろうとは微塵も感じなかった。
 他方で,このような手厚いサポートがあり,深く反省して更生を目指しながらも,また再犯をしてしまう人が常にいるのは何故だろうと,疑問が深まった。この点に関しては,更生保護の制度だけではなく,教育制度,医療制度,刑事政策などの諸制度も深く関わって,1つの制度だけが上手く運用できても,解決しない問題なのかもしれない。
 そして,見学を通して,私自身にも,罪を犯した者達に対する偏見が,無意識のうちにあったかも知れないと思った。そのような一人一人の無意識が,更生を妨げるのかもしれない。
 「偏見で人は崩れる,交流で人は変わる。」帰りの車の中で,その言葉のことをずっと考えていた。
 松田さんを始めとする,更生保護施設の見学にご協力,ご支援頂いた方々に感謝致します。

 

   雄郡寮を見学して
                  第72期司法修習生 Z
 このたびは,お忙しい中,大変親切なご案内ご説明を頂戴しながら,雄郡寮を見学させていただき誠にありがとうございました。
 見学をさせていただき,日々の施設運営と取組をされる重要性と責任とを心に刻ませていただきました。
 私が,学んでいた大学の施設と同じ建物に,更生保護施設があったこともあり,更生保護施設自体は身近に思っていましたが,その中を見学させていただいたことは初めての経験であり,とても勉強をさせていただきました。
 施設長のこれまでの様々な高齢受刑者や福祉を要する受刑者に対する施策を実施されてきたご経験を伺い,お年を召された方や,障がいをもたれている方が施設や地域等で生活していこうとするにあたって,直面される苦労や壁を知りました。
 また,雄郡寮の役割として社会における居場所や出番の他に,自己肯定感が必要であると伺ったことや地域の祭りにおいて太鼓を演奏し拍手喝采を受けた寮生のエピソードに,大変感銘を受けました。
 入寮以前の生活において不足しがちであったかもしれない自己肯定感,すなわち,人間の生命維持のための欲求であるとか経済的な損得を超えた,他者に対して自分が役に立っているという認知を求めようとする心理のことをプラトンは気概と呼びましたが,そのような気概を育むとともに,そのような気持ちをもって一日一日を努力していけば,報われるところがあることを体感することができる学び舎として,雄郡寮はすばらしい場所であると思っております。
 施設の点でも,あたたかな食堂や,寮生同士,あるいは地域の方々と触れ合うことのできるホールや畑があり,人の点でも,訪問させていただいた際,寮生の方に挨拶をいただいたり,事務室の方と話し込んでおられたりという家庭的な環境や更生保護女性会の方や寿会を始めとする皆様が温かく寮生を包み込んでくださる環境があるように拝見しました。このような環境があってこそ,寮生の方々の更生や生活の安定が実現されてゆくことを,実感致しました。
 今回見学させていただいた体験を,今後,法曹として活動してゆくにあたって,最大限生かしていきたいと考えております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/1/31 木曜日

「愛媛県更生保護会会員制度」創設される

Filed under: ブログ — admin @ 13:56:22

               愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 御承知のように,平成28年12月に「再犯の防止等の推進に関する法律」が施行され,更生保護事業は,大きな変換期を迎えることとなりました。とりわけ,この法律の下で,これからの更生保護の諸活動を,国,地方公共団体,そして,国民(すなわち,地域住民)の一人ひとりが主体となって行うことになったことは,非常に画期的なことでした。さらに,翌29年12月に閣議決定された「再犯防止推進計画」では,①更生保護施設における受入れ・処遇機能の充実,②高齢者又は障害のある者等への支援等,薬物依存を有する者への支援等,③更生保護施設による再犯防止活動の促進等,など更生保護施設として取り組んでいかなければならない課題が明確となり,当保護会においても,これらの課題に積極的に取り組むこととなりました。
 そこで,これらの課題に対応するために,当保護会においては,被保護者に対し,上記の①の充実を図り,②の支援等を行って,③の促進等に取り組むことを目的として,「高齢者等生きがいづくり農園作業」及び「依存症改善プログラム」等を実施することとすることとし,併せて,経済的な自立に向けた就労を支援するのに必要な「通勤用自転車」,「作業服」等を購入し補充していく必要があることから,これらの実施に要する運営資金及び講師謝金等とともに,購入費等の支出に要する経費を確保していくこととしました。しかしながら,これらを国の委託費だけで賄うことには,到底限界があることから,このような会員制度の創設を行うに至ったものであります。
 つきましては,皆様方に当保護会の会員(年会費は,法人の場合一口1万円,個人の場合一口5千円です。)となっていただき,御寄附を賜ることにより,上記の課題に取り組んでいく上で必要な御理解と御支援をお願いしたく存じますので,よろしくお願いいたします。
 なお,すでに10を超える個人・法人の方々が会員登録をされていますが,これらのうちには,愛媛県更生保護会協力雇用主会“寿”会に所属する企業に勤める元寮生4人が会員登録を申し出るなどの美談が含まれていることを申し添えておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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