2018/5/25 金曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 15:32:01

         愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 この題名については,本BLOGの中で,これまで2回にわたって掲載してきましたが,今回は,去る3月13日(火)に行われた,前年度(平成29年度)最後の施設見学において,見学後に司法修習生5人が作成した感想文を掲載させていただきます。
 今回の感想文においても,司法修習生の観察力や直感的洞察力の質の高さが如実にうかがわれますが,これら司法修習生が当保護会の見学において,更生の過程をたどっている被保護者(刑務所出所者等20人)の生活を身近に感じて,彼らの更生のために大きな役割を果たしている更生保護施設の重要性,すなわち,刑事政策上極めて重要なものであることに関心と理解を示していただいたことに,私は大変感激しています。そして,この意味からも,これら司法修習生の法曹界における次代の活躍に期待を寄せたいと思っています。
 皆様方には,以下に掲載した司法修習生の感想文を読まれて,誰もが犯罪や非行のない安全で安心して暮らせる社会づくりについて考えていただきたく,願います。そして,そのために必要不可欠な,刑務所出所者や少年院出院者等の一人ひとりが立ち直り,再び犯罪や非行に走らないように支援するための活動が充実されなくてはなりません。是非とも,皆様方に再犯・再非行の防止をはじめとする更生保護に関する諸活動に何らかの形で参加していただき,更生保護活動の輪を広げていく上での大きな力となっていただきますようお願いします。
 なお,感想文中の「雄郡寮」は,愛媛県更生保護会の通称であることを申し添えます。

 

   更生保護施設の人々
                 第71期司法修習生 J
 事務官さんの車に揺られること約15分。松山市土居田町という初めて訪れる地の,閑静な住宅街の中に,雄郡寮は佇んでいた。「更生保護施設」という言葉のイメージから,どこか郊外のひっそりとした場所にぽつんと建っているのだろうと思っていたので,施設の所在地という点がまず驚きであった。
 到着した我々を快く迎え入れてくれたのは施設長の松田辰夫さん。まずは,会議室のような小部屋で雄郡寮についての説明を受ける。更生保護施設という場所自体初めて訪れたということもあり,伺った話はどれもこれも新鮮なものであった。しかし,何より印象的であったのは,雄郡寮について話す松田さんの表情がとても生き生きしていたことであった。特に,この地域の人々が雄郡寮という施設に理解を示し,積極的に関心を持ってくれていることに対しては,本当に感慨深そうに話をしていた。松田さんとは初対面であったが,真剣に更生保護のことを考えている熱意ある人なのだと,すぐに察せられた。
 説明の後は実際に寮内を見学して回った。寮内はどちらかというと公民館のような印象の造りであった。実際に,ある入寮者の部屋も見学させてもらったが,その部屋で暮らす男性は快く部屋の中を見せてくれた。彼がどのような罪を犯したのかは知る由もないが,どこか気恥ずかしそうに室内を見せてくれた彼は悪い人のようには見えなかった。入寮したときは塞ぎ込んだような人でも,本人の頑張り次第で,明るくなって退寮していくという話を聞いていたが,彼は入寮時どのような感じであったのだろうか。
 いくら立派な施設を建てても,結局それを活用するのは人である。更生保護という職業に熱意を持って取り組む人,それを理解し支える人,その施設の中で本気で更生しようと頑張る人。これらの人があってこその更生保護施設なのだと感じた。そういう意味で,雄郡寮は理想の形の一つなのではないかと思った。

 

   更生保護施設を見学して
                 第71期司法修習生 K
 更生保護施設という言葉を聞いて,それまで私が思い描いていたイメージは,施設職員の厳重な監視のもとで入所者が社会復帰に向けての更生を図るというものでした。しかし,この度の雄郡寮の施設見学,松田施設長のお話をお聞きして,そのイメージは変わりました。
 私は,現在の検察修習クール前,刑事裁判修習でしたが,予想以上に被告人の再犯率が高いという現状を感じていました。ただ,そのような状況に陥ってしまうのは規範意識が低いから等の内因だけでなく,その人を取り巻く生活状況や交友関係等の外因にもきっと問題があるのではないか,更生保護制度はまさに後者の視点から再犯を防止するとともに,新たな社会復帰を目指す人々にとっての助力機関であると理解できました。雄郡寮では,起床時間から就寝時間まで概ねの一日のスケジュール管理がなされつつも,規則正しい生活習慣を共有するなかで利用者同士,また,職員の方々とのコミュニケーションを図っていくことが可能となるのだと感じました。実際,施設内を見学させていただくと,廊下や様々な共有スペースは大変綺麗に整理清掃されており,また,ある入所者の方が自室の様子を私達修習生に快く見せて下さった様子からも,松田施設長をはじめとする職員の方のご指導がしっかりと行き渡っているという印象を受けました。松田施設長が掲げていた「居場所」の確保,帰る場所があることの嬉しさや楽しさは,心にゆとりをもたらしてくれる大事な要素であるのだと教えて下さりました。
 そして,そのような生活状況の改善を前提としながら,就職指導や協力雇用主制度を活用した就職斡旋,さらにガレージセール等の土居田町の人々との社会交流まで実施されているとのことで,ここまで手厚いご指導ご支援に支えられているとは全くの予想外でした。松田施設長は,入所者の方の顔つきが段々と柔和なものに変化していく様子を嬉しそうにお話しされているご様子からも,本当に雄郡寮での更生保護プログラムが入所者の方に上手く行き渡っているものだと感じました。もちろん,その裏では様々な苦労や努力,多くの支援があるのも容易に想像できます。入所後まもなくして行方不明になった方のお話,薬物使用の入所者に向けた専門的支援方法の養成等はその一例ですが,これらのことからも更生保護施設の運営がいかに大変であるか十分に伝わりました。
 私は,とかく被疑者・被告人の生活状況や前科前歴等について有利や不利といった考察に終始していましたが,よく考えてみると,被疑者・被告人が自立更生しなければ真に解決したとはいえないと思います。それは再犯による被害者を増やさないためだけでなく,被疑者・被告人のためでもあると思うのです。私達修習生は法曹実務に就いてからも,更生保護の担う役割は大変大きく,こうした方々のご尽力があることを忘れてはなりません。このように考えさせてくれた今回の見学は大変有意義でありました。本当にありがとうございます。

 

   更生保護施設を見学して
                 第71期司法修習生 L
 更生保護施設「雄郡寮」を見学させていただきました。
 見学を通して学んだことは,更生保護における,「地域社会に受け入れられること」の重要性です。
 雄郡寮は,明るく静かな住宅街の直中にあり,施設の外観や内観は清潔感に溢れていました。また,施設内にある地域交流室は,市民に無料で開放されており,カラオケ大会等地域のレクリエーション活動に利用されているそうです。このように,雄郡寮は,地域社会に受け入れられるような環境づくりに力を入れられていました。
 更生保護対象者の更生は,本人の自助努力のみをもって叶うものでなく,社会がその努力を認め,受け入れることが不可欠であると思います。そして,その足掛かりとして,更生保護施設の存在が受け入れられることもまた重要であると,雄郡寮の姿勢や取組から知ることができました。
 私はこれまで,刑事判決を,犯罪者に対する処遇の「結末」であるかのように捉えていました。しかし,雄郡寮で前向きに人生を立て直そうとしている方々の姿を見て,犯罪者の更生という目的の前では,有罪判決はむしろ「スタートライン」に過ぎないのだと気付くことができました。
 そうはいっても,一度罪を犯した人が,偏見の目を振り切り,社会から認められることは容易ではありません。日本は,リベンジしようとする者に不寛容な社会であるとも思います。このような現状を変えるため,「更生保護は,対象者の保護であるとともに,究極的には社会の保護でもある」ということを,私たち一人一人が意識しなければならないと自戒を込めて強く感じました。今後は,更生保護制度に対して,法曹として,そして社会の一員としてどのように関わることができるかについて,考えていきたいと思います。

 

   更生保護施設を見学して
                 第71期司法修習生 M
 検察修習の一環として,更生保護施設である雄郡寮を見学させていただきました。
 近年,犯罪件数自体は減少傾向にあるものの,刑法犯検挙人員における再犯者人員の比率は増加傾向にあります。そのため,刑事裁判の目的は,犯罪行為に対して適切な刑罰を科するとともに,再犯の防止にあるとも言えます。
 以上のような事実は知ってはいましたが,実際に再犯防止のためどのような取組がなされているか,雄郡寮を訪問させていただくまで,ほとんど知りませんでした。
 雄郡寮においては,食事や入浴などは共用部分で行われていました。他人とコミュケーションする場を設けることで,集団生活に慣れさせるための配慮がなされていました。もっとも,居室は完全個室となっており,各人のプライバシーにも配慮されていました。このように,雄郡寮は,集団生活における生活スタイルを身に付ける場であるとともに,プライバシーにも配慮した,調和のとれた施設であると感じました。
 社会復帰に際しては,地域などとの交流も欠かせません。雄郡寮では,施設内に地域交流施設が設置され,地域住民の方がカラオケなどで楽しまれていると聞きました。地域住民の理解なくして,真の更生保護は成り立たないと思いますので,雄郡寮は地域と上手く調和のとれた,真の更生保護施設と言えると感じました。
 また,地域清掃活動を実施している折には,地域住民の方から,感謝の言葉が伝えられることもあると聞きました。雄郡寮は,入所者にとって「居場所」であるとともに,地域清掃活動などは入所者にとって「出番」であると感じました。人間,誰しも褒められ・感謝されれば,素直に嬉しいものです。地域住民から伝えられる感謝の言葉は,「自己肯定感を高める」ことにつながると思います。
 再犯防止を考える際には,更生保護の観点を踏まえることの重要性を感じました。
 この度は,雄郡寮関係者の皆さま,御多忙の中,私たち司法修習生を受け入れていただき,ありがとうございました。

 

   更生保護施設を見学して
                 第71期司法修習生 N
 先日,松田辰夫施設長の案内のもと,愛媛県更生保護会の保護施設を見学しました。罪を犯した者の生活環境を整え更生を図るため,起床時間,食事時間,入浴時間も決められ,ごみの分別,清掃,洗濯等身の回りの管理も徹底されていました。たしかに,このような施設に入居している間は規則正しい生活を送るよう指導されるとは思いますが,ここを出てから安定した生活を続けられるのか,退去後の支援ももっと充足しなくてもよいのだろうかと感じました。
 施設に伺う前に,保護観察所長からの講話をいただきましたが,ここでもやはり再犯の防止がキーであると学びました。私達法律家は判決が出るところまでしか被疑者あるいは被告人に関わっていないのが現実ですが,一度罪を犯した人が二度と罪を犯さなくてすむために,処分確定後も保護司や保護施設関係者と協力してできることがないか,考えていかなければいけないと思いました。

 

 

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