2020/2/29 土曜日

寮生からの手紙

Filed under: ブログ — admin @ 12:06:18

              愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 昨年1年間(令和元年)における愛媛県更生保護会(寮舎の名称は,「雄郡寮」)の収容保護人員は,実人員では83人,延べ人員では6,200人(収容保護率85.2%)となっており,退所人員は,63人となっています。このように,多くの被保護者(寮生)が,愛媛県更生保護会に入所し,そこから退所しています。
 そのような中で,本年某月に,一人の被保護者(50歳代後半)が愛媛県更生保護会を円満退所して社会復帰しました。
 その彼が,退所するに当たって,「愛媛更生保護施設雄郡寮職員の皆様へ」と題した手紙を私に提出してくれました。私をはじめ全ての職員が,その手紙を読んだ時,私たちの更生保護の指導及び支援の内容・方法が間違っていないことを改めて実感するとともに,ひとしお感慨を深くしました。
 そこで,皆様方に,愛媛県更生保護会における被保護者に対する自立更生と社会復帰に向けた処遇及び支援の実情について,より広く理解してもらうために,以下,その手紙を原文のままで掲載させていただくことといたします。
 もとより,その手紙を広く広報のために活用させていただくことについては,退所時に彼から同意を得ているところですが,彼やその関係者の特定ができたり,それらの者の個人情報に深く関わる部分については,実名等に替えて「〇〇」と表記して秘匿したり,省略させていただいたりしましたので,念のため申し添えます。

新年明けましておめでとうございます。
短い期間ではありましたが、〇〇月〇〇日から44日間お世話になり有難うございました。
本日、皆様方のおかげで晴れて無事に退寮させて頂く運びとなりました。
昨年、〇月〇日に〇〇刑務所において松田施設長様に面接を実施して頂き、「貴方の社会復帰のお手伝いをさせて頂きます。」という温かいお言葉を頂き、心から嬉しく思ったことをまだ〇ヶ月しか経過していないのに、今は懐かしくなります。それだけ私にとって、この〇ヶ月という時間は「光陰矢の如し」のごとく一日一日の時間の経過を早く感じました。
特に、面接からわずか10日間程で引き受けの結果を頂いたことは、松田施設長のお言葉に嘘はなく、早急に結果を出してくれたことは本当に心から嬉しく思いました。周囲の受刑者の方たちは、保護会の面接を受けてから結果が出るまで1ヶ月から2ヶ月要していただけに、このスピーディーな対応は一日も早く社会復帰させてやろうという松田施設長の親御心を感じました。そして、〇〇月〇〇日に入寮後、わずか5日間で〇〇社長との出会い、面接をセットアップして頂き、採用して頂けることになり、〇〇月〇日から仕事に就けることが出来、退寮の日を迎えるまで、一日一日の時間の経過を早く感じました。本当にこの44日間は毎日が充実した時間で達成感のある、かけがいのない貴重な時間でした。最初は厳しいと感じた毎朝5時半に起床し、朝礼を行い、掃除をして食事をして出勤するという正しい生活リズムは、今となれば本当に良かったと思っています。会社は9時始業ですが、毎朝,1時間前に会社に到着し、オフィスの掃除をして、自分のデスクを整頓して、仕事に取り組むようにしています。
きっと、そのような行動を自発的にとるようになったのは、寮の規則正しい生活習慣の延長線上で成り立っていると感じています。おかげさまで、そのような良いリズムで生活させて頂いたので、仕事上においても頭の回転も速くなり、冴えわたり、自ずと良い結果に繋がっています。先日も某総合病院に新しいビジネスモデルの提案することが出来、少しですが会社に貢献できたことは嬉しく思っています。お客様からの帰る途中に、〇〇社長から過去のスキルやキャリアがさび付いていないことに驚かれ、戦力になると喜んでくれたことは今後の励みになります。そして、仕事だけではなく、何よりも毎日が楽しい、充実していると実感できることが幸せです。本来であれば、私のような身寄りのいる者がお世話になる施設ではないと考えていたので入寮前は気が引けてしまいましたが、入寮させて頂き、職員の皆様方の温かいお言葉や激励を頂いたことや寮生の方たちと仲良くお付き合いさせていただいたことは、不安な私の心理状態を解消して頂き心の支えになり自身を取り戻させて頂き順調な社会復帰への道に繋がりました。しかしながら、これからも全て順風満帆にいくとは思っていません。〇回の実刑で懲役生活を過ごした事実、前科者というハンディキャップはこの先も消えることなく、一生背負って生きていかなければいけません。それだけに社会の目も厳しいという現実を常に自覚しながら行動しなければいけないということを肝に銘じ戒めています。
これからは、(中略)現在の情報化社会の中において情報格差で取り残されている「デジタルデバイド」と呼ばれる社会的弱者の人達に対して、少しでもお役に立てるように、貢献できるように鋭意努力していきたいと決意しています。
そして、今まで迷惑をかけてきたにも関わらず、離れずに支えてくれた妻、母、義理の両親、子供たちに少しでも孝行をしてやりたいと思います。また、社会復帰の道を与えてくれた〇〇社長には必ず仕事で結果を出して、ご恩返しをしたいと思います。(後略)
ご存じのように、欧米社会では、前科者の社会復帰に対しては社会が寛容であり、多くのサクセスストーリーや敗者復活戦が生まれるような社会が確立され、更生した話しをよく聞きますが日本では未だに前科者に対しては厳しく偏見の目で見られる人が大半を占めており、円滑な社会復帰は容易ではありません。そこで私からのお願い事で大変恐縮ですが、どうか職員の皆様方におかれましては、これからも前科者へ愛情を持って寄り添って頂き、社会復帰への道のアドバイザーとして、良きサポートを最大限のご尽力を賜れればと思いお願い申し上げます。
今回、施設長をはじめ職員の皆様方が、私のような人間を快く迎い入れて頂いたこと、そして、社会復帰へのご支援、多くの恩情を与えていただいたことは一生忘れません。
いつの日か雄郡寮へもご恩返しできるように頑張ります。そして、笑顔で皆様方と再会できることを楽しみにしています。44日間、本当にお世話になり誠に有難うございました。
改めて、心から感謝申し上げます。
最後になりますが、皆様方のご健勝とご多幸、そして、雄郡寮から一人でも多くの寮生の方が円滑な社会復帰、旅立ちをされることを心からお祈り申し上げます。
     至誠にして動かざる者は、未だこれあらざるなり。
      With sincerity, people will always be moved
                      令和2年〇月〇日
                      〇〇 〇〇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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