2019/8/28 水曜日

みんなのひまわりロード

Filed under: ブログ — admin @ 19:06:32

              愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 当保護会には,施設の南側に隣接する道路に沿って東西に約76メートルのフェンス(高さ約1.2メートル)が設置されていますが,その内側に,ほぼ同じ長さの花壇(幅約1.2メートル)が整備されています。
 ところで,その花壇には,たくさんのツツジが植えられているところ,本年6月から7月にかけて,それらツツジの間に74本もの見事な「ひまわり」が咲き誇りました。そのうち,最も茎の長いものは,何と3.4メートルもあり,頭花の中央部分の直径は24センチメートル,50枚の花びらのうち最長のものは7センチメートルありました。
 このような「ひまわり」をその花壇に植えることとなったいきさつなどについて紹介しますと,当保護会所在の松山市土居田町で活動している松山地区更生保護女性会土居田支部(会員数66人)の熊谷雅子支部長(73歳)からの提案に基づいて,本年5月から,同支部会員のほか当保護会の職員及び寮生(被保護者)が一緒になって土を掘り起こし,肥料をやり,種をまき,その後定期的に共同して草取りをし,頻繁に寮生が水やりをするなどして,大切に育てて咲かせてきたものです。
 つまり,熊谷支部長は,長い期間にわたって当保護会に関わっているうちに,その花壇に「ひまわり」を植えたいと考えるようになりました。そこで,昨夏来,当保護会の「ふれあい農園ひまわり(雄郡寮)」における農園作業において,同支部会員とともに,職員や寮生と力を合わせて野菜や花などを育ててきた経験と実績を生かし,この際,更生保護のシンボルマークである「ひまわり」を植え,「ひまわり」が咲いている環境の中で寮生に立ち直りの日々を過ごしてほしい,そしてまた,彼らを応援する地域であってほしいとの願いを込めて実行に移そうと提案されたのでした。
 そうした「ひまわり」を育てていく過程で最も気を配ったことは,猛暑の中で,せっかく芽生え成長した「ひまわり」を枯らさないようしっかりと水やりを行うことはもとよりでしたが,度重なる台風の接近・通過に備えて,大きく茎が伸びた「ひまわり」が折れたり,倒れたりすることのないよう,支柱を立て,綱を張るなどしたことでした。これらの一連の作業は,竹田廣見補導員(77歳)の指導の下で,多くの寮生が進んで取り組んでくれました。青空に向かって,元気に大きく伸びていく「ひまわり」の姿に,自分たちの自立更生の姿勢を重ねるかのように,必要な作業に労を惜しむことなく積極的に取り組んでくれました。こうした献身的な行動を目の当たりにしながら,私は,施設長として,寮生の施設生活における協調的で明るく和やかな雰囲気を感じ,うれしく思うとともに,今後とも全職員と協力一致して,いわば「住み良い家庭的な雰囲気」の施設づくを目指して,その一層の充実化・拡大化を図っていくよう,努力を続けていきたいと考えました。
 そして,いつの間にか,この「ひまわり」が咲く花壇に名前が付けられました。それは,地域社会へと伸びていく,広がっていく,つながっていくという「更生保護活動」の意味を強くイメージして,「みんなのひまわりロード」と名付けられたものですが,当保護会における前記の農園作業をはじめとする施設運営に熱心に協力してくれている一方で,当保護会内の地域交流室において,毎週,仲間とともにカラオケを楽しんでいる地元の中村佐智子さん(73歳)が「ひまわりロード」と命名されたものに,私が「みんなの」を冠して決定されたものです。
 こうしてできあがった「みんなのひまわりロード」のお陰で,幾つかの大きな変化が生じました。それは,一口に言って,それまで施設の前の道路をただ歩いて通って行くだけであった地域の人々が,足を止めてじっくりと「ひまわり」を観賞したり,振り返って「ひまわり」を眺めながら通行したりなどすることが多くなったことです。つまり,「ひまわり」を見ながら施設の建物をも見てくれて,その存在を知ろうとしてくれており,このため,地域住民の方々との距離がぐっと縮まった感がありました。
 さらに,もっと顕著な例を紹介しますと,7月1日(月)のことですが,当該道路上で初老の御婦人がお孫さんと思われる1歳ぐらいの男の子を抱っこして「ひまわり」を見物していたので,私が声をかけると,「向こうの方に住んでいますが,こちらで「ひまわり」が立派に咲いているという話を聞いて,この子に見せてやりたくてやって来ました。素晴らしいですね。背丈の低い「ひまわり」は良く見かけますが,こんなに背丈が高く,大きな「ひまわり」は初めて見ました。何よりも元気なのがいいですね。この子も元気に育ってほしい・・・・・・。これから全部が咲くのが楽しみですね。」と話してくれました。また,同日には,松山市内の中心街において,約400人の更生保護関係者らが参加して,第69回の“社会を明るくする運動”の街頭宣伝パレードが行われましたが,その際に,愛媛県更生保護女性連盟の近藤直子会長(68歳)が当該「ひまわり」1本を手に持って行進をされ,多くの通行人から注目を集めると言ったことがありました。
 そのほか,7月の中旬になって,近隣ののぞみ保育園の園児23人が先生方に連れられて写生大会の準備のために見学に来られ,施設周辺にかわいらしいにぎやかな声などが盛んに上がっていたことがありました。また,アマチュアの画家がわざわざスケッチをしに来られて,見事なデッサンを描いてくれて,前記の園児たちの写生とともに前記の地域交流室に展示してくれたことなどがありましたが,このようなことは,「ひまわり」が咲いていなかった当時(前年度以前)には,全く考えられなかったことです。
 最後に,更生保護施設の存立や運営のためには,地域住民の理解と協力を得なければ十分な効果を挙げることができないと言われ,もとよりそのとおりですが,そうした地域住民の理解等を得ることは,この度の「みんなのひまわりロード」の開設に見られるように,更生保護事業を行う関係者の工夫と努力によって,何とでもなるものであり,したがってまた,必ず実現するものであることを付言しておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019/8/8 木曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 15:17:30

               愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 今回も,前回のBLOGに引き続いて,司法修習生の感想文として,本年5月14日(水)に当保護会を見学された第72期司法修習生(第3クール第4班)5人による感想文を掲載いたします。
 なお,感想文中の「雄郡寮」は,愛媛県更生保護会の通称であることを申し添えます。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 E
 「今日は仕事早く終わったんですね。」「はい,そうなんです。」「じゃあゆっくり休んでください。」「ありがとうございます。」寮生が照れながらも生き生きとした語り口調で施設長と会話していた姿が印象に残った。
 更生保護施設を見学する前に,名訓戒と吾作という話を教えてもらった。いくら犯罪者が改心したところで,社会に戻るところがなければ本当の更生は実現されない。犯罪者が立ち直るために必要なのは,本人の決意と,犯罪者を受け入れる社会であり,その一助として更生保護施設は作られた。私はこの話を聞いたときに,受け入れる社会とはすなわち,生活するところ,仕事であるから,更生保護施設は,仕事をするための本拠地としての生活の場を提供しているのだな,という程度のイメージしか持たなかった。しかし,施設長の話を聞いたり,寮の見学をするにつれて,犯罪者が寮を出てこれから一人で生活し,本当の更生をするためには,仕事と生活の場を満たすだけでは足りず,精神的に満たされていることが一番重要なのだということに気づいた。施設長は,いかに寮生の自己肯定感を高め,生きがいを作ることができるかを日々考えていた。寮生に接するときは,誰かが自分のことを考えてくれている,自分を認めてくれている,と思ってもらえるように接していた。更生保護施設はもともと犯罪を犯した人が住んでいるところなのに,施設の周りに家が建つとそれを買う人がいること,地域の人が寮生の農園作業を手伝ってくれること,太鼓の演奏に感動してくれる地域の人がいること,これらは全て,自分が社会の人に受け入れられているという自己肯定感を高めるものだ。このような自己肯定感は,これから彼らが社会に一人で戻ったときに,心の支えとなるものではないだろうか。
 また,高齢者や知的障害者の寮生を社会の福祉サービスにつないだり,そのような寮生との接し方について外部の講師を招いて勉強会を開いたり,薬物依存者に対してのケアといった取組をしている話を聞いた。職員の方は,どうすれば寮生のためになるのかを日々考え続けて,熱意をもって活動されていること,そしてこのような職員の方の熱心な取組があってこそ,地域の理解が得られて,寮生も生き生きと生活できているのだと感じた。

 

   雄郡寮の皆様から教えていただいたこと
                 第72期司法修習生 F
1 私たちは,令和元年5月14日,愛媛県更生保護会(雄郡寮)を見学させていただいた。見学を経て,多くのことを勉強させていただいたのであるが,その中でも強く印象に残っているのは,①更生には,自己肯定感を与えることが必要であるという施設長のお話,②雄郡寮が住宅地に囲まれていたこと,③施設長を始めとする職員の方の熱意の3点である。
2 ①について,施設長は,更生させるためには,居場所(住居)と出番(就労)を与えるだけでは不十分で,加えて自己肯定感を与えることが必要である旨お話しされていた。かかる考えは,施設長が長年にわたって矯正とそれに続く更生保護の仕事に携わってこられたご経験から帰納されているものであるという。
  刑事政策に関心をもって勉強してきた身としては,大変興味深いお考えであると感じた。たしかに,私たちは,当然のように帰る家があり,当然のように仕事をし,日々活動する中で,自己肯定感を抱きながら生活している。多くの人にとっては当たり前と感じることであっても,その当たり前の中に大切なことが詰まっているのかもしれない。
  雄郡寮では,入寮者に自己肯定感を与えるための活動として,地域住民の方と共に農園作業に取り組んでいるという。地域住民の方と共に作業することで,地域から受容されていることを実感し,また育てた農作物がどこかの食卓に並んでいることを想像することで,誰かの役に立つ喜びを感じることができるであろう。かかる取り組みが入寮者の自己肯定感に繋がり,更生へと結実することを祈っている。
3 ②について,雄郡寮を訪問する前の私は,更生保護施設は,住宅地から離れた場所にあるものだと想像していた。松山刑務所は,街中を外れた山の方にあるから,更生保護施設もこれと同じような場所にあるのだろうと想像していたのである。しかし,私の予想は大きく間違っていた。雄郡寮は,周囲を住宅地に囲まれていた。施設内から周辺住宅を,また周辺住宅から施設内を見通すことができるほど近い距離に,両者は位置していた。しかも雄郡寮は,住宅地の並ぶ景色になんら違和感を残すことなく,溶け込んでいたのである。
  この点について,施設長は,近隣の方々の理解と信頼のおかげで,雄郡寮は成り立っている旨お話しされた。しかし,近隣の方々が雄郡寮に理解を示し,信頼を寄せてくれるのは,まさしく施設長を始めとする職員の方々の真摯な取組や,入寮者の方々の行いの積み重ねによる賜物ではないかと思う。職員の方々と入寮者とが一丸となって,更生に向けた取組を長きにわたって続けてきたことかが,今の雄郡寮を成り立たせているのである。職員の方々や入寮者の方々の努力に思いを致すとき,その覚悟と気概に,感服の念を抱かずにはいられない。
4 ③について,職員の方々が熱意を持って仕事にあたられていることは,施設長のお話からすれば,火を見るより明らかであった。その他にも,「雄郡寮たより」や,「愛媛県更生保護会BLOG」を拝見したが,その隅々に余りあるほどの熱意を見て取ることができた。
  他者の更生に携わるというのは,実に苦労の多いことであると推察する。なかには心理的に不安定な者や危害を加えようとする者を相手にすることもあるであろうし,更生を期待した者に裏切られることもあるだろう。そのような中にあって,かかる仕事に携わり続けることは,確固たる覚悟と余りある熱意がなければできることではない。雄郡寮で働く職員の方々を目の前にして,刑事司法に携わる者としてどのような心構えでいるべきかを思い知った。
5 大変恥ずかしい話であるが,法律家になろうとする身でありながら,私は,更生保護施設について詳しく知っているわけではなかった。しかし,今回の見学を通じて,更生に向けられた活動としてどのようなものがあるか,どのような思いで活動されているかについて,その一端を知ることができた。ここで得た学びは,今後,どのような法律家になりたいかを考える一助となるであろう。かかる貴重な学びを与えて下さった関係者の方々に,感謝したい。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 G
 本日は,松山市内にある,更生保護施設,雄郡寮にお邪魔しました。検察修習が始まってから,矯正施設である刑務所の見学はさせていただきましたが,更生保護施設を見学させていただくのは初めてのことでした。
 雄郡寮を見学させていただいた際,第一に印象的であった点は,地域社会の中に強く馴染んでいるという点でした。刑務所を見学させていただいた際は,その空間が閉鎖的であり,管理監督の点から種々の制約があるなと言う印象を強く持ちましたが,雄郡寮は住宅地の中にひっそりと存在し,施設内の設備を地域の住民の方々に開放しているということで,そのように地域社会の中に溶け込んだ形で更生保護施設があることには驚きました。それだけでなく,入寮者の方が地域の方と野菜の収穫をしたり,お祭りを行ったりと,地域のコミュニティと近接した形で更生の道を歩んでいることは印象深かったです。
 また,施設長の方より,雄郡寮や,現在の更生保護制度について,更には雄郡寮での更生保護のやり方等について講義していただきました。その中で最も印象的であったのは,更生保護においては,矯正の視点ではなく,社会福祉の視点で「自己肯定感を高める取組」が求められるというお話でした。刑務所見学においても,出所後,就職難等から「どうせ自分なんて」とか.「自分の居場所がない」と考え,再び犯罪に走ることが多いこと,矯正施設である刑務所が更生保護に関わることができる部分は限られているとの話を耳にしました。そうだとすると,矯正の視点ではなく,社会福祉の視点で更生保護に当たる,雄郡寮のような更生保護施設の果たす役割は大きなものであるなと感じました。それと同時に,出所者等が再び犯罪の道に走らないようにするためには,上記のような自己否定感を払拭させることが重要であると思いました。その点,雄郡寮では,地域社会への貢献やコミュニティとの共生を通じて自己肯定感を確立させ,更生への道を歩めるようにしているとのお話を伺いました。このようなスタイル,考え方には深く共感致しましたし,多くの出所者等に浸透すれば,再犯率の低下に繋がるのではないかと考えました。それと同時に,我々一般人も,「更生したい」,とか「やり直したい」と考えている人がいれば,「犯罪者だから」などと偏見を持たず,適度に彼らと関わり,共生に協力することも時として必要であると感じました。犯罪歴のある人と関わりたくないと考えること自体がおかしいとまでは思いませんが,彼らが「何とかやり直したい」と前向きに考えている以上,できる限りそれに協力することが行く行くは再犯率の低下,社会全体の幸福の増進に繋がるのではないかと考えました。
 また,このような更生保護施設の取組が実効性を帯びるためには,我々法曹界に属する者がこれらの取組を正確に理解することが不可欠であるとも考えました。法曹が更生保護に関わる部分はどうしても限定的になりがちであると思いますし,それを根底から変えることは困難であると思います。しかしながら,更生保護の考えや取組を正確に理解していれば,当該事件についての刑事手続に法曹が関わる段階から,再犯防止や更生の点を念頭に置いて被疑者に関わることができると思いますし,被疑者にとっても再犯防止,更生への道が開かれるのではないかと思います。更生保護の分野においては,当該分野の専門家や職員の方に全面的に委ねるのではなく,他の分野,刑事手続に携わる種々の分野の人々の協力が不可欠であると考えました。
 加えて,今回の見学においては,雄郡寮の内部も見学させていただきました。更生保護施設内を見学することなどこれまでなかったので,貴重な経験となりました。そして,施設の中では入所者の方が自然な感じで過ごされている様子がうかがえました。現在,検察修習において,種々の犯罪の形態を見ることが多いので,せめて現在入所されている方,これから入所する予定の方は二度と犯罪に走らないでもらいたいとの素朴な感情も抱きました。
 今回,更生保護施設という,日常生活ではあまり馴染みのない施設を見学させていただき,更生保護の実務がどのような理念や方法で動いているのか,その触りを学ぶことができたと思います。これから法曹の実務家となる上では,単に法律の知識や事件処理の記述のみならず,このような,更生保護分野の方々の取組や考え方をできる限り正確に理解し,自らの職務を遂行することが重要であると思いました。そのように法曹界に在籍する者が更生保護分野を正確に理解することこそ,更生保護制度を実効性たらしめる第一歩になると思いますし,再犯率の低下に繋がるのではないかと思いました。今回見学を通して学ばさせていただいたことを今後の修習に生かし,一日でも早く一人前の有能な実務家になれる様に精進していきたいと考えております。本当にありがとうございました。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 H
 更生保護施設という施設について,そのような施設があるということは知っていましたが,執行猶予や仮釈放となった人が,その後どのような生活を送るのかという点は,今まできちんと勉強する機会がありませんでした。
 今回見学させていただき,更生保護施設の活動内容や施設利用者の生活状況について詳しく知ることができました。
 まず,施設利用者の更生を成功させるためには,居場所・出番・自己肯定感が必要であるとの考えから,更生保護施設を出て,一人で生活するようになったとしても,自らこれらを得られるような支援活動を行っているとのことでした。
 居場所を確保するに当たり,居場所となる共同体のルールを守ることが必要となるから,更生保護施設でも生活のルールを定め,これを遵守するように指導しているとのことでした。共同体のルールを守ることというのは,当然のことと思っていましたが,これまでの人生経験から,そのような習慣が身に付いていない人や,これまで刑務所で過ごしていたため,今の共同体のルールがよく分からないという人もいると知り,当たり前のことから確認し,必要な手当をしていくことの大切さを知りました。
 また,出番を確保するに当たり,就労が可能な人に対しては,ハローワーク等へ行くように指導し,ほとんど全ての施設利用者が就労先を見つけて働いているとのことでした。また,働く意欲はあるが,高齢者で就労先が見つからないという人に対しては,近所の農家へのお手伝いを紹介するなど,どこかしらで何らかの出番を確保できるように工夫していることを知りました。地域の理解がなければ,近所の農家からお手伝いを募集しているというような話も回ってこないであろうことを考えると,地域の理解を得るために積極的な活動をしていることを知りました
 さらに,施設利用者が自己肯定感を得られるように,施設利用者が地域住民に受け入れられているとの実感を持ってもらうために,地域のお祭りの準備で施設利用者が太鼓を披露する,高齢者教室に出席する,自家農園を始めるなど地域社会との交流を図り,施設利用者が社会に受け入れられているという実感を持ってもらう活動をしているとのことでした。残念ながら,犯罪を犯した者が,近所に住んでいるのは嫌だと思う人も少なからずいるとは思いますが,雄郡寮の近所では,施設利用者であるからといって排斥すること無く,受け入れてもらえる関係を構築できており,そのような信頼関係を構築すべく努力した施設長はじめ職員の方の努力に感動しました。
 また,各施設利用者の問題点に着目し,個別的な支援も行うようにしているとのことでした。
 例えば,施設利用者の中には,これまでの金銭の使い方について問題があったから犯罪を起こしてしまったという人もおり,金銭の管理・使用に関する教育をするということもしているとのことでした。また,精神上の病気であるが,これまで何らかの理由で通院してこなかった人に対して,通院の付き添いをして,通院を習慣づけることや,一人で生活するようになったときに,経済的な理由から通院を辞めてしまうことのないように各種支援の申請等も行っているとのことでした。さらに,今後も施設利用者の性質や需要に応じて,支援のプログラムを増やしていく予定であると聞き,施設利用者の更生支援に全力で取り組んでいると感じました。さらに,施設利用者の更生に必要であれば,職員のほうでも積極的に新しい知識を得るようにしているとのことでした。例えば,精神に障害がある人に対して,どのように対応をすれば,良いかを学ぶため,児童自立支援施設の人から講義を受けるなど,必要だと感じたらすぐにやっているのは,熱意がなければ難しい活動だと感じました。
 さらに,施設内を見学した時,何名かの利用者とすれ違うこともあったが,誰もが,大きな声で挨拶をしており,各利用者が,更生に向けた決意と努力をしていると感じ,更生保護施設の可能性を強く感じさせられました。
 各施設利用者の特性に応じた処遇を十全に行うことは,大変難しいことではありますが,雄郡寮では様々な工夫をして,その人が今後社会内で更生していくために必要な支援を惜しみなく行っていることを知りました。今後法曹になるにあたり,更生を支援して社会とつなぐことが欠かさず重要であるという視点を忘れないようにしたいと思います。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 I
 再犯防止について,以前より関心があったため,今回の更生保護施設見学は非常に有意義だった。再犯防止に向けて現場でお仕事をされている方のお話は,普段聞くことのできないものであり,知見が広がったように感じる。
 更生保護施設と聞くと,明るい雰囲気を持たせようと努力はしているが,やはりどうしても陰があったり,地域からは少し孤立してしまっているのではないかと思っていた。しかし,実際には,施設内の対象者達は,私達とすれ違う度に気持ちのよい挨拶をしてくれたり,喫煙所で対象者同士で和んでいたりと,ちゃんと明るい雰囲気で生活できているようだった。また,施設の目の前には真新しい住宅が建っており,これは,当該施設の存在や内容を知った上で,住民が入居したとのことだった。今月末には,施設内での催し物があり,そこには近隣の中学生や幼稚園児も演者として参加するそうである。これらは,地域住民が当該施設を排除しようとしていないことの表れであると思う。社会の人々は,どうしても,対象者に対してネガティブなイメージを持ってしまい,特に,近隣住民は,更生保護施設についても地域から排除したいと考えてしまうのではないかと思っていた私にとって,良い意味で非常に刺激を受ける経験となった。
 施設長のお話で,再犯防止のためには,「居場所」と「出番」(役割)に加え,「自己肯定感」が必要であるというものがあった。これまで,再犯防止には,居場所と役割が必要であるとしか考えていなかったが,自分に置き換えてみれば,いくら居場所や役割を与えられたところで,自分の役割に満足しておらず,やらされていると感じているのみだとすれば,きっと再犯・再非行に走ると思う。そのため,このお話は非常に納得できるし,今までこのことに気付かなかった自分の考えの浅さにも気付かされた。
 今回の見学で,良い意味で施設に対する印象が壊され,また,再犯防止について考え直す良いきっかけとなった。今回の経験を活かし,私もより良い社会を作る一助となれるよう頑張りたい。貴重な経験をさせて頂き,ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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