2019/7/25 木曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 17:55:43

              愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 本年3月13日(水)午後3時から同4時30分まで,当保護会において,第72期司法修習生(第2クール第3班)4人による施設見学が行われました(なお,今回から,それまで午後3時30分から同4時30分までの1時間であった見学時間が,このように1時間30分となりました。)。
 言うまでもなく,司法修習生とは,司法試験に合格し,裁判官,検察官,弁護士となるために,最高裁判所から命じられて法律実務を修習している人たちのことですが,最も難しいと言われている国家試験を突破した人たちだけに,直感的な観察力や鋭い洞察力,優れた感性等を身に付けていることに,私は,その人たちの施設見学を通じて,それら将来の法曹を担う優秀な人たちから,毎回新鮮な感動を覚え,大いに刺激を受けています。そして,このことはまた,これからも同じであると思っています。
 今回も,4人の司法修習生の人たちには,私の,施設の概況や更生保護事業の実際の運用状況等に関する講話を熱心に聴いていただくとともに,施設内各所を隈なく見学していただきました。とりわけ,講話の中で述べた,刑務所出所者等の立ち直りのために必要不可欠な「自己肯定感」を高めることについて,大きな関心を示していただいたことは,望外の喜びでした。
 ところで,この「自己肯定感」を高めることについては,本BLOGでも何回も紹介していますとおり,私が寮生(被保護者)の指導・支援等に当たって最も力を入れているものの一つですが,なお,このことに関連して,本年1月30日(水)に当保護会を御視察された小川新二高松高等検察庁検事長から,御視察後にいただきましたお手紙の一部を,恐れ多いことですが,御了承を得ましたので,引用させていただきますと,「出所者・出院者のそれぞれの背景や特性を踏まえた働きかけを行うことで「自己肯定感」を持たせていこうという雄郡寮の取組みは、再犯防止のためにもっとも重要なポイントを押させた取組みであると感じています。」ということです(なお,「雄郡寮」とは,愛媛県更生保護会の通称です。)。
 それでは,以下,上記4人の司法修習生の感想文を掲載させていただきます。
 なお,同検事長は,「先日司法修習生が見学にお邪魔した際の様子もブログで拝見しましたが、今後も、松山地検を始め、検察・法務の関係機関がお世話になりますが、引き続きよろしくお願い致します。」とも仰せられていることを付言しておきます。

 

   雄郡寮を見学して
                 第72期司法修習生 A
 今回,私たち修習生一同は更生保護施設である雄郡寮を見学させて頂く機会に恵まれた。これまで,更生保護施設について詳しく知る機会もなく,犯罪者を更生させる施設という字面だけ見ると刑務所のような要塞然とした施設を想像していたが,実際に見ると本当に普通の住宅街の中にある普通の建物であったので驚いた。
 驚きながらも雄郡寮に入ると,施設長の松田辰夫さんが出迎えてくださり,そのお話をうかがった。松田さんは元刑務官として41年間矯正に携わってこられたそうだ。刑務官というと受刑者を厳しく指導・監督するイメージがあり,犯罪を犯してしまった人たちと向き合い扶けるという更生保護のイメージとは正反対であったので意外であった。また,松田さんは,更生保護には福祉の視点が必要と考えておられ,社会福祉士の資格も取得されているということで,その情熱には驚いた。一体,その情熱はどこから湧いてくるのだろうかなどと私なりに考えたが,やはり,長い刑務官人生の間で多くの受刑者を受け入れ,送り出すことを繰り返していれば,時には戻ってくる者もいたであろうし,そういう仕事をしていると,なんとか更生させたい,二度と刑務所に戻ってきて欲しくないという気持ちが湧くのかなと思う。
 松田さんのお話しの中で印象に残っているのは,更生には「居場所・出番」と「自己肯定感」が必要だという点だ。これまでの修習で刑事裁判を数多く傍聴してきた身としては,出所後の住む所の確保や就職のあてなど「居場所・出番」の重要性は裁判でもよく問題になっているので知っていたが,「自己肯定感」という視点は全くなかったので新鮮だった。なるほど確かに,いくら家と仕事があっても結局本人がしっかり立ち直らないと再び犯罪を犯すことは避けられないだろうし,それならどうすれば立ち直ることができるのかと考えれば,その答えは松田さんのおっしゃる「自己肯定感」なのかもしれない。松田さんは,寮生が朝出かけたり夜帰ってきた際の声かけを大事にしているとおっしゃっていたが,そのような小さなことの積み重ねが寮生の自己肯定感を育んでいるんだろうなと思う。他にも地域に受け入れられている雄郡寮だからこそであるが,地域の人を呼んでのイベントなど外の人との交流の機会が設けられていたり,仕事ができない寮生も何か貢献できるようにと農園を運営したりと,「自己肯定感」というしっかりした視座があるからこその運営をされており,このような施設に入れる人たちは幸運だなと思う。
 今までは裁判で裁かれて刑務所に入った人たちのその後のことはあまり考えたことがなかったが,これからは更生保護も含めて,法曹としての立場から「その後」を考えたいなと思う。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 B
 私は,今まで,更生保護施設という存在について,名前は知っていてもそこで具体的に何をしているのかということやどのような施設なのかという点に関してはきちんとわかっていませんでした。そのため,今回の愛媛県更生保護会を見学させていただいて非常に多くのことを学ばせていただいたと思います。
 まず,見学に際しては,初めに松田施設長が施設の概要や目的などを教えてくださったのですが,施設長が更生にかける熱意や展望について非常に深く考えておられるのがとても印象的でした。
 再犯防止の観点からみても,犯罪を行った人の保護観察後,出所後の社会復帰は社会的に重要なファクターであるにもかかわらず,周囲の環境や世間の目など上手くいかないことも多々あると思います。しかしながら,愛媛県更生保護会では,入寮者が,社会復帰後に地域ではじかれることなく溶け込んで暮らしていけるように,更生保護会の周辺住民との交流を図る活動を行っており,一人一人の自立をよりリアルに考えておられました。
 やはり過去に犯罪を行った人に対する世間の目は厳しいものがあると思われますが,愛媛県更生保護会では,地域住民の所有する田んぼを耕して野菜を栽培するなどしており,施設の方々の努力もさることながら,周辺住民の方々の更生施設に関する理解がとても深いように感じました。
 施設内は,日当たりがよく清潔に保たれており,ゴミの分別の徹底や,洗濯,掃除など,入寮者が施設を出てからも一人で日常生活を送れるような体制が整っていました。また,体育館では朝の体操やカラオケなども催されるようで,入寮者の身体的にも精神的にも前向きになれるようなものでした。
 過去に犯罪を犯したとしても,保護観察や刑期を終え,しっかり更生が完了した人は,世間一般の人々と何ら変わりありません。そういった人々が,再度犯罪に染まることなく生きていくためには,愛媛県更生保護会のように教育的更生が不可欠であると痛感致しました。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 C
 私達は,松田辰夫施設長の案内のもと,更生保護施設「雄郡寮」の見学をさせていただいた。
 まず,雄郡寮に到着してから,松田辰夫施設長の講話を受けた。刑事裁判の手続の中でも,更生可能性を考える際には,引受人や職業の点にスポットが当てられるイメージを持っていたが,それだけでは不十分であり,松田施設長は更に,「自己肯定感を持つこと」をキーワードとして強調されていたことが印象に残っている。
 私は,更生保護施設と聞いて,どこか世間から離れた場所で,更生プログラムを行う場所と思っていたが,雄郡寮は住宅街の真ん中にあり,地域との融和を体現していると思った。
 また,一般市民の住居に近い場所に所在しているというだけでなく,雄郡寮では,カラオケの大会,ふれあい農園ひまわりでの作業など,寮生と近隣住民が交流をするための取り組みが頻繁に行われていることにも驚いた。特にふれあい農園ひまわりで作られた野菜は,寮での食事にも使われるということで,作業に当たった寮生の仕事・努力が,具体的な形になって,成果として現れ,そして食べている人を目の当たりにすることは,強い自己肯定感に繋がり,とても良い取り組みだなと感銘を受けた。私達が雄郡寮を見学した際には,すぐ隣に家が数軒新築中であり,近隣の方々の,更生保護施設に対する理解の上に,雄郡寮の活動も成り立っていることを感じた。
 雄郡寮を見学して,更生・更生保護施設という施設に対し,自分が今までどのように考えていたか,また,その考えと現実がどのように違っていたかなどを考える貴重な機会になったと思う。私が実務家として活動する際にも,今回の松田施設長の講話や,自分が施設内で見て体験したことを活かし,更生につなげて行けたらと思う。

 

   更生保護施設を見学して
                 第72期司法修習生 D
 先日,検察修習の一環として,愛媛県更生保護会の保護施設である「雄郡寮」を訪問させていただいた。
 見学に先立ち,松田辰夫施設長から,施設の沿革や,更生保護のあり方,寮生の生活などについてお話いただいた。施設長は,「居場所」と「出番」に加えて,「自己肯定感」を与えることが更生に不可欠であると強調しておられた。お話の中で,犯罪者として社会から排除された者達は,私たちが普段当たり前に行っているふとした会話や挨拶もなく,孤独の中で生きているのだということを感じた。そして,この孤独感こそが彼らの顔つきをこわばらせ,再犯を招いてしまうのだということがわかった。犯罪者に対する世間の目は厳しいが,犯罪者の気持ちに寄り添える社会になってほしいと強く思った。
 更生保護施設は,山中にひっそりと佇んでいるようなものだと思っていたが,雄郡寮は住宅街の真ん中にあり,驚いた。民家が隣接しており,居室からは外で遊ぶ子ども達の笑い声が聞こえてきた。近隣住民が,寮生に恐怖感を抱いている様子は全く感じられず,雄郡寮はまるで住民が集う公民館や図書館のように地域に馴染んでいた。施設内は,木の温かみが感じられる開放的な造りとなっており,私たちが訪問した夕方頃には,食堂で夕食の支度が行われていた。施設長に声を掛けられた寮生が,穏やかな笑顔で応えているのが印象的だった。
 寮生の年齢や経歴は様々であり,中には障害を持った者もいる。雄郡寮では,各寮生と丁寧に向き合い,それぞれの個性や強みを引き出す努力がされていた。太鼓が得意な寮生に,太鼓を披露する機会を用意したところ,自信につながり,前向きに更生の道を歩き始めたという具体例もお聞きした。職員の皆様方の情熱に大変感銘を受けた。
 法曹が刑事事件に関わるのは基本的には判決までである。しかし,判決が確定した後も,犯罪者の人生は続いていくのであり,再び社会に受け入れられるのは簡単なことではない。犯罪者のその後の人生にも思いを馳せながら,刑事事件に関わっていきたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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