2018/3/23 金曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 18:48:25

 

 

                       愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫
 愛媛県更生保護会では,毎年度4回,松山地方検察庁からの要請により,司法修習生の施設見学を受け入れていますが,このことについては,昨年8月9日(水)の本BLOGで紹介しているところですので,皆様方には御承知のことと思います。
 そこでさらに,今回は,去る2月7日(水)に司法修習生5人による施設見学が行われたことについて紹介します。
 当日は,予定時間1時間のうち,かなりの時間を割いて施設長が会議室において施設概況と運営方針等について説明し,その後,残りの時間を被保護者の生活する場所や近隣住民等の利用する地域交流室等を案内して見学を行っていただきました。
 施設見学後,数日の後,5人の司法修習生から感想文が寄せられました。一読して,法曹界において次代の活躍が期待される優秀な人たちらしく,深い洞察と豊かな感性で更生保護の現場を直感的にとらえ,その結果を感想文にまとめて提出してくれたことを感じました。このような示唆に富んだ感想文に触れ,更生保護の実務に直接携わる立場にある者として恥ずかしくないよう,今後も思考,活動の面でたゆまない努力を積み重ねていかねばならないと自覚した次第です。以下に,同検察庁の承諾を得て,当該感想文の全文を掲載いたしますので,皆様方の更生保護に関する理解を深めていただければ幸いです。
 なお,文中の「雄郡寮」は,愛媛県更生保護会の通称であることを申し添えます。
 ちなみに,本稿作成時の本年3月20日現在,在会中の被保護者は21人で,収容保護率は105.0%となっています。そのうち,高齢者は4人(19.0%)で,障害者は3人(14.3%)となっており,この両者で7人(33.3%)と全被保護者の3割を占めていますが,これら高齢者・障害者の立ち直りに当たっては,“居場所”の確保は必要であるも,総じて,一般的に言われている“出番”の確保によって立ち直りを期待することが難しいことから,再犯防止対策上の観点からは,更生保護会職員により,通院の手配とその同行その他の医療及び養護の手配を行い,障害者手帳の取得や障害年金の請求等の手続,福祉サービス等の利用申請,社会福祉施設等の確保やその見学及び体験実習,福祉関係機関・団体との連携などを行うという,いわゆる“医療的・福祉的支援”につなげる必要があります。なお,これらに要する更生保護会職員の労力や時間等の負担の程度には,一般の健常者に対するそれと比べると,格段に多大なものがあることを付言しておきます。

 

   施設長の思いに触れて

                             第71期司法修習生 E
 更生保護施設というと,人はどのようなイメージをもっているだろうか。少なくとも私は,良いイメージなど微塵も持っていなかった。更生保護施設に入る人は,基本的に何らかの犯罪行為を過去に行った者である。犯罪から距離を置こうと考える多くの人々が,過去に犯罪行為を行った者たちに対して良いイメージを持たないことは,どちらかと言えば自然であるように思う。
 しかし,雄郡寮施設長の松田さんのお話を聴いているうちに,私は前述のイメージを改めることになった。
 たとえば,松田さんが紹介してくれた「愛媛県更生保護会職能別職員構想」という雄郡寮の運営体制の一つが挙げられる。同構想は,社会福祉士,薬物担当,SST担当,福祉担当,介護担当,というように雄郡寮の各職員がそれぞれに専門性を高め,様々なタイプの更生保護対象者に対し,より適切かつ効果的な対応を行える体制を整えるというものである。特に,今後避けられない社会の高齢化に伴う更生保護対象者の高齢化に備えて,介護担当の職員の増強を強く訴えるお話は,とても説得力を感じた。
 また,「Withの教育」という考え方も興味深かった。これは,たとえば精神年齢7歳程度の大人を,社会の役割分担に参加させるにはどうすれば良いか,本気で考えるというものである。松田さんは,犯罪者の更生には①居場所(住居),②出番(仕事)のみならず,③自己肯定感(生きがい)が必要であると考えており,「Withの教育」はまさに③自己肯定感を生み出すための取組といえよう。
 私の更生保護施設に対するイメージが変わったのは,以上のようなお話を聴いて,松田さんの信念に触れたからである。再犯率の高さが問題となる中で,犯罪者を更生させるというのは容易なことではない。更生対象も十人十色であり,各人の意思を尊重しつつ更生を図るとなれば,それが困難な課題であることは明らかである。しかし,そんな困難な課題に対し,何ができるかを考え,そのために職員の資質の向上を図り,実践していく。そんな松田さんのチャレンジ精神に,私は心を打たれたのかもしれない。
 実際のところ,雄郡寮は地域の人々に受け入れている。地元の中学生のブラスバンドが来てくれたというのは,地域の人々が雄郡寮に対して悪いイメージを持っていないということの,一つの証であろう。
 施設長の取組が,私だけでなく,地域社会の考え方も変えている。人の信念の力の強さというものを,目の当たりにした気がした。

 

   更生保護施設を見学して
                             第71期司法修習生 F
 検察修習の一環として更生保護施設「雄郡寮」を見学させていただきました。
 そもそも私は,更生保護のシステムを全く理解しておらず,非行を行った少年や,刑務所から仮釈放を受けた人たちは,生活の本拠となる場所があるかどうかに関わらず,社会に出て行くのだと思っていました。「来週更生保護施設の見学に行く」と言われたときも,何の施設なのか全く想像できませんでした。
 実際に更生保護施設に行き,松田施設長のお話を聞いて始めて,上で挙げたような人たちの生活の本拠となる場所として,更生保護施設が運営されているということを知りました。
 「雄郡寮」について,私は失礼ながらなんとなく古めかしい建物を想像していましたが,実際は温かみのある雰囲気の建物で正直驚きました。施設の中も回らせていただきましたが,清潔感があって,各部屋や共有スペースの整備も行き届いており,これから更生を目指していく生活の本拠として理想的な場所だと思いました。
 また,「雄郡寮」は地域住民に支えられているというお話を伺いました。ガレージセールでたくさんの人が集まったこと,そのオープニングセレモニーで地元中学校の吹奏楽部が演奏をしたこと,施設内の地域交流室には住民がよくカラオケなどをするために訪れていることを聞きました。こうした地域の方々の更生保護施設に対する寛容な姿勢は,非行や犯罪を行った人が社会に戻っていくために不可欠の要素であると感じます。
 ただ一方で,国内のあらゆる更生保護施設が「雄郡寮」のように住民に受け入れられているわけではないということも聞きました。
 中には,犯罪や非行を行った人に対する不信感から,排斥的な感情が根強い地域や無関心な地域もあるでしょう。私は,東京から松山市に来ましたが,東京ではどこに更生保護施設があるのか知りませんし,関心さえ持ったことがありません。しかし,地域住民のそういった態度は,非行や犯罪を行った人たちの社会への復帰の道を閉ざし,再犯に見を落とさせてしまうおそれを生みます。私は無関心を恥じ,法曹を志す者として,そして一人の地域社会に生きる人間として,もっと関心を持っていこうと考えました。
 その関心のきっかけをくださった「雄郡寮」の施設長をはじめとする皆さんに,心から感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。

 

   更生保護施設を見学して
                             第71期司法修習生 G
 検察実務修習が始まる前は,事件について警察と協働して捜査をし,罪を犯した人の最終的な処分を決定することが検察官の仕事であり,それに尽きると考えていた。しかし,今回更生保護施設を見学する機会をいただき,そのような考えは改めなければならないと感じた。
 雄郡寮を訪れて最初に感じたのは,閑静な住宅街の街並みに馴染んでおり,一見しただけでは更生保護のための施設とは分からなかったことである。施設の中を見学させていただいても,全体的に暖かみがあり,施設に帰住した人が過ごしやすい環境が整っていると感じた。何より,地域交流室では定期的にカラオケ会が開かれるなど,施設にいる人が,地域と一体となって生活していることを実感した。
 施設長のお話の中で,罪を犯した人や非行を行った人が社会で再出発するためには,「居場所」と「出番」を確保することだけでなく,その人たちの「自己肯定感」を高めることが必要であることを強調されていたのが強く印象に残っている。一般的には,生活環境に恵まれない人が暮らすための施設があり,仕事が見つかれば,社会復帰を果たしたと言えるかもしれない。しかし,真に自立したといえ,二度と同じ犯罪や非行を繰り返さないようにするためには,雄郡寮のような環境で生活を続けていき,自分が地域や社会に受け入れられていると感じることこそが重要であると学んだ。
 検察実務修習において,実際の事件を受け持ち,被疑者に会って話を聞くと,それぞれ生活環境について個別の事情があるということを実感する。そして,各事件を形式的に処理しても,被疑者はまた同じことを繰り返すだけなのではないかという気持ちが強い。検察官として被疑者の処分を決定する際の大きな目的の一つに,再犯の防止がある。この目的を本当の意味で果たすためには,検察官としても,犯罪や非行を行った人の再出発を支えている施設や職員の方々,地域の方々がいるということを頭に置きつつ,各被疑者の個別の事情に応じて,その人が二度と同じことをしないためにはどうしたらよいかを真剣に考えていく必要があるだろう。

 

   更生保護施設を見学して
                             第71期司法修習生 H
 検察修習の一環で,雄郡寮を見学させていただきました。
 更生保護施設は,犯罪や非行をした人たちが,社会復帰をするまで一応生活する場所,という抽象的なイメージがありました。しかしそうではなく,犯罪や非行をした人たちの自立支援を図り,さらに福祉的支援まで行うことにより,更生保護を現実のものにしている場所でした。
 雄郡寮では,高齢者や障害者の福祉的支援を行っているということでした。高齢者や障害者は,そうでない人に比べ,就労の機会が得にくい等の理由で,社会復帰が難しいという印象があります。そうであるからこそ,更生保護施設が積極的な働きかけをすることが必要なのだと思います。雄郡寮では職員の方の研修会や,専門知識及び技能の習得等にも力を入れているとのことで,福祉的支援を実効性のあるものにしているという印象を受けました。
 そして,雄郡寮が地域社会に溶け込んでいることにも驚きました。施設長が雄郡寮の近隣住民に,雄郡寮で実施するガレージセールのチラシを配りに行った際,ほとんどの世帯が玄関先までチラシを受け取りに来てくれたというお話を聞きました。また,ガレージセールでは,地元の中学生が吹奏楽の演奏をしたとのことでした。地域社会が更生保護施設を受け入れているということは,更生保護にとって重要だと思います。更生保護施設という,過去の犯罪や非行を行った人を受け入れている,ともすれば偏見にさらされがちな場所を,地域社会に受け入れられるものにするために,職員の方が常に努力をしているんだということも感じ取れました。
 今回の見学を通じて,法律家にとっても,犯罪や非行を行った人たちの処遇について考えることは重要であることを学びました。犯罪や非行を行った人たちでも,いずれは社会に復帰して生きていかなければなりません。私達がなろうとしている法律家も,犯罪者等のその後の生活について十分に考えた上で,処分を決定したり,法的サービスを提供していかなければならないと思いました。
 見学させていただき,とてもよい経験ができました。ありがとうございました。

 

   更生保護施設を見学して
                             第71期司法修習生 I
 私は,人生で初めて更生保護施設を見学しました。これまで,更生保護というと,少年事件で罪を犯してしまった少年達が社会復帰をするために,準備をするための施設であるという認識しかありませんでした。しかし,現状は,高齢の方の窃盗等の事案を契機として来た方が多く,さらに精神状態が万全でない方も多くおり,そのような状況なある方々が社会復帰するための施設でもあるということを感じました。
見学した更生保護施設では,社会福祉士を初めとした多くの専門家が職務についており,社会復帰を目指す場所としては専門的なサポートが受けられる絶好の場所であると感じました。その上,更生保護施設はきれいな施設で,さらに住民の方とも交流できるスペースがあり,施設に入っている方々にとっては,快適な住環境で過ごせるとともに,積極的に周辺の方々と接することができる環境も整っていることから,社会から孤立することなく,より円滑な復帰を目指せるこの上ない環境であると思いました。
 社会に復帰することを希望する方々が,円滑に社会に復帰するためには,このような充実した施設と環境が絶対に必要であると思います。一度,罪を犯す等して社会から遠ざかってしまった人を,何らかの環境整備も行わず社会に放り出してしまっては,犯罪を繰り返すといった社会的な問題を引き起こしてしまうとともに,その人自身が望んでいないにもかかわらず罪を犯さないと生活できない状況にも陥ってしまうと思います。そうならないためにも,更生保護施設が社会に占める役割が重要であることを強く感じました。見学させていただいた更生保護施設のような,専門的なサポートを受けられるとともに,上記のような整備された環境下にある更生保護施設が今後さらに増えていくことで,見放されない寛容な社会と,一度社会から遠ざかってしまった人が社会に円滑に復帰し,再度罪を犯すことがない社会の実現が可能となると思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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