2017/8/21 月曜日

二つの礼状

Filed under: ブログ — admin @ 19:37:26

 愛媛県更生保護会(以下「当保護会」という。)においては,毎月1回,松山地区及び伊予地区の更生保護女性会による夕食支援活動(誕生会及び七夕会等を含む。)が行われています。
 去る7月は,23日(日)に伊予地区更生保護女性会10人の支援による誕生会及び七夕会(いわゆる夕食会)が行われ,寮生16人のほか,職員等4人が参加しましたが,同夕食会の後,今回初めて,寮生の代表者が感謝の気持ちを表して礼状を書いて出したところ,同更生保護女性会の播田裕子会長から親切で真心がこもった礼状をいただきました。
 ついては,寮生代表者及び播田裕子会長の同意を得て,以下において,これら二つの礼状を掲載することとしましたので,皆様方におかれては,犯罪や非行を犯した人たちの更生を支え,支えられて更生の道を歩んでいくことを基盤とする,更生保護女性会の方々と寮生との心のふれあう当保護会における夕食会の模様を,これらの礼状から読み取っていただきたく存じます。
                                (文責 施設長) 

 

○ 寮生代表者の礼状
 寮生を代表して一言お礼申し上げます。
 本日は極暑でお忙しい中、この様な素晴らしく楽しい催しを開いて下さってありがとうございました。
 寮生は今回は食事会だけでなくお誕生日会、七夕会も開かれるとの事で全員すごく楽しみにしておりました。とても美味しく仕出し弁当かと思ったお料理が全て手作りとの事でしたのでびっくりしました。更に驚いたのが、4月生まれの私が誕生日プレゼントを頂けた事です。私は53歳になったのですが、やはり幾つになっても誕生日を祝ってもらえるのはうれしいものです。趣向をこらされたクイズ、余興も楽しくて食事中に童謡を歌っている時なんかは小学生の頃の一家団欒を思い出し、ちょっと泣きそうになりました。この会を開いて下さった方々もすごく気さくで良い方々ばかりでしたので、初参加でしたが、リラックスして会を楽しむ事が出来ました。七夕会は中学校で行なわれた以来でしたが、短冊に願い事を書く時はその当時に戻った気がしました。
 今回の会は健全な社会復帰を目指してる私達には確実に今後の力になるでしょう。
 本日は本当にありがとうございました。
                           平成29年7月23日
                                   寮生代表  

 

○ 伊予地区更生保護女性会会長の礼状(施設長宛て)
拝啓
 夜明けと共に蝉の声が耳に、太陽に向かって元気いっぱいの向日葵が目に、まさに夏本番の毎日ですが、変わらずご多忙の事と存知ます。
 先日の夕食会、理事長さん、雇用主さんにもご出席頂き、お礼申し上げます。
 寮生さんからのお礼のお便り、参加者一同、大変嬉しく思いました。(感激して、涙があふれた方も・・・・・・)
 本当は、もっとお伺いしたいのですが、会員数、予算等々の事情もありますので・・・・・・。
 お手伝い出来ることがありましたら、出来る限り、お役に立ちたいと考えています。今後ともよろしくお願い申し上げます。
 暑さ厳しい折、くれぐれもご自愛下さい。
 お礼まで。(職員の皆様にもよろしくお伝え下さい。)
                                 かしこ
  平成29年7月30日
    愛媛県更生保護会施設長 松田辰夫 様
                            伊予地区更女 播田裕子  

 

○ 伊予地区更生保護女性会会長の礼状(寮生宛て)
拝啓
 夜明けと共に蝉の鳴き声が一段と暑さを感じさせられる毎日ですが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
 夕食会(七夕まつり・誕生会)にお伺いさせて頂いてから一週間過ぎました。この度は嬉しいお便りを戴き、恐縮しております。早速、参加された支部長さんに見て頂きました。皆さんから、こんなに思っていただいて、お伺いして本当に良かったと、とても喜んでいました。
 殆どの方がきれいに食べて下さった事、素敵な声で童謡を歌って下さった事、短冊のお願いに気持ちよく応じて下さった事、今後の活動の源になります。本当にありがとうございました。
 夏本番、まだまだ暑い日が続きますが、くれぐれもご自愛の上、社会復帰を目指して下さい。
 私達も微力ではありますが、応援しています。
                                 かしこ
  平成29年7月30日
      雄郡寮寮生の皆様
                            伊予地区更生保護女性会
                                  支部長一同  

                               (注)原文縦書き

 

 

2017/8/9 水曜日

司法修習生の感想文

Filed under: ブログ — admin @ 11:55:01

 愛媛県更生保護会では,毎年度4回,松山地方検察庁からの要請に基づいて司法修習生による施設見学を受け入れています。そして,見学後,司法修習生の全員が感想文を作成して提出されています。
 次代の法曹界を担う司法修習生は,施設見学において,施設長から更生保護の理念や制度に続けて,更生保護施設とその運営について説明を受けた後,実際に被保護者の生活の場その他の場所を見学しますが,毎回,施設長の説明に熱心に耳を傾け,活発な質問が出るなど,更生保護施設の運営状況等に大変関心を持っている様子がうかがえるところです。そして,施設見学を通じて,何を聴き,何を見,何を感じたのかなどについて考えをまとめていますが,その感想文には,私たち更生保護関係者にとっても非常に参考になる柔軟で多様な意見や感想等が数多く述べられており,その優秀な感性と能力に心を打たれ,大きな刺激を受けているものです。
 そこで,こうした感想文をもっと多くの人たちに知っていただくために,今回は,本年7月11日(火)に見学された第70期司法修習生4人の感想文を,以下に,松山地方検察庁の了承を得て掲載させていただくこととしました。
 皆様方におかれては,これらの感想文を熟読され,今,更生保護の現場で何が行われているか,犯罪をした人たちや非行少年たちがどのようにして立ち直ろうとしているか,さらに更生保護施設職員の不断の努力が彼らの更生をどのように支えようとしているかなどを感じ取っていただき,更生保護施設の重要性及び必要性について理解と認識を深めていただければ,幸いに存じます。
                                    (文責 施設長) 

 

   更生保護施設を見学して
                                 第70期司法修習生 A
 「被告人を懲役●年に処する。この裁判が確定した日から●年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。」刑事裁判で,こういった判決書は良く見てきましたが,その「保護観察」が具体的にどういうものなのか,これまでイメージを持てずにいました。
 近年,刑事事件の認知件数が下がっている一方で,再犯率が上昇しており,再犯防止策が必要であると言われます。再犯の原因として住居と就労が安定しないことが挙げられますが,再犯防止策として有効な手段は,この2つを確保することにあるようです。しかし,懲役刑に処せられた人の約50パーセントは,帰住先を確保できないため仮釈放が認められず,住居と就労が確保できない状況にあり,再犯に走る・・・。犯罪や非行を繰り返すこういった悪循環を脱し,社会復帰を円滑に行うために,矯正施設から日常社会へソフトランディングができる循環が必要です。
 こういった状況を踏まえ,更生保護の現場はどういった取組をされているのだろうと考えつつ更生保護施設「雄郡寮」を訪問しました。
 「雄郡寮」は住宅街の一部にあり,その外見は学生寮のようで,町並みに溶け込んでいました。この日は,30度を超える夏日だったのですが,室内に入ると,さわやかな空気が流れ,清潔感のあふれる空間に驚きました。居室,浴室,洗濯室のいずれも整理整頓されていました。刑務所ももちろん整理整頓されているのですが,それとは異なった,整頓されつつも生活感が窺える空間が,とても心地良いものに感じました。厳しいだけではなく,自発的に生活環境を整えることで,意識まで更生させているのだろうなと感じました。
 高齢化が進むことで,入寮者の平均年齢も高くなってきているとのお話を伺いました。年長者が68歳と,高齢化は顕著なようです。そうすると,今後必要なのが,福祉や介護の視点です。施設長は,社会福祉士の資格を取られているとのことで,時代に即した柔軟な対応を俊敏にされていらっしゃり,感銘を受けました。
 施設長のお話で特に印象に残ったのが,更生保護を達成するために必要な第三の要素として,「自己肯定感」を与えてあげることだと仰っていた点です。人は,他人から要求されることで満足感を覚え,生活を充実させることができるというのは一般的でしたが,同じ事は,犯罪や非行により一度道を踏み外してしまった人にもあてはまり,むしろその必要性は高いことを実感しました。
 今後法曹として活動していくにあたり,被告人や非行少年に今回の経験を伝え,更生の促進に貢献したいと思います。

 

   更生保護施設を見学して
                                 第70期司法修習生 B
 検察修習の一環として,更生保護施設雄郡寮を見学させていただきました。
 更生保護施設については,法科大学院在学中に刑事政策の講義で得た「刑務所出所者等のうち頼るべき人がいないなどの理由で,帰るべき場所がない人たちに対し,一定期間,宿泊場所や食事を提供する民間の施設」という程度の知識しかなく,実態については全く知りませんでした。
 雄郡寮の施設は,明るく開放的な食堂,コンパクトながらプライバシーに配慮された快適な個室,清潔で整理整頓された共有スペース等,設備がとても充実している印象を受けました。雄郡寮は,生活費がかからず,寮生は職を得て,アパートを自力で借りて,自立するまで安心して住むことができます。そして,朝夕と調理担当の方が心を込めて作った食事が提供されているとのことでした。見学中,お仕事から帰られた寮生と施設のスタッフが親しそうに挨拶されているのを見て,物の面だけでなく,心の面からも雄郡寮が寮生に社会復帰の支えになっているのだなと感じました。
 雄郡寮では,寮生に対し,宿泊場所や食事の提供だけでなく,ハローワークを通じた就職指導や協力雇用主制度を活用した就職斡旋等,寮生が定職を持つことを手助けしているとうかがいました。罪を犯した人の再犯率は,仕事をしている人と無職では明らかな差があります。このような実態を踏まえて,雄郡寮では,再犯を防止することに最も効果のある就職支援に力を入れているのだなと思いました。また,雄郡寮では,定職に就き,その給料からアパートの敷金,礼金程度を貯めることを指導する,門限やアルコールの禁止及びごみの分別等のルールを定めて,規律のある生活を営み,社会への適応力を高める処遇をする等,寮生が施設を出た後の生活を見据えた指導をしっかりやられているのが印象的でした。さらに,雄郡寮では,高齢化社会に対応し,高齢の寮生に対しては,公的機関と連携した福祉の手続をサポートすること,障害のある寮生には,保険証や精神保健福祉手帳の作成や当面の医療費の立替えの相談をしていること等を聞いて,個々の寮生の抱える問題を把握するのみならず,個々の寮生に寄り添った処遇がなされていると感じました。
 雄郡寮には,故坪内寿夫氏の記念碑がありました。坪内氏と言えば,来島ドックグループのオーナーであり,佐世保造船や波止浜造船の再建に辣腕を振るった,愛媛県にとどまらず80年代の我が国を代表する経済人と記憶しておりますが,塀のない刑務所として有名な大井造船作業場の開設や愛媛県の更生保護に尽力されました。また,雄郡寮には,協力雇用主会寿会や各地区更生保護女性会等の力強いサポートがあることをうかがいました。犯罪や非行をして刑務所や少年院に入った人も,いずれは社会に戻ってきます。社会の中で立ち直りを助けるためには,地域の方から,更生保護に関する理解と協力を得ることが不可欠です。愛媛県の更生保護,雄郡寮の活動は,著名な経済人から市井の人々まで,地域の方の温かい善意と寛容な心で支えられているのであると感じました。
 今回,雄郡寮を見学し,更生保護施設の実態に触れる貴重な機会を得ました。雄郡寮の方々には,ご多忙にもかかわらず,司法修習生を快く受け入れていただき,ありがとうございました。

 

   更生保護施設を見学して
                                 第70期司法修習生 C
 今回,更生保護施設を見学させていただいて最も印象に残った点は,人とのつながりを大切にしているということです。
 私は,これまで更生保護施設がどんなところに立地するのか知りませんでした。行ってみて,住宅街の中にあり,公民館のような雰囲気の場所だなと感じました。実際,更生保護施設の中に,少し小さめのホールのような集団処遇兼地域交流室という部屋があり,そこを,地域の人が使用できるよう開放するなどしているそうです。このことにより,地域の方が更生保護施設に親しみを感じることができ,何かあれば協力しようという気持ちを抱きやすくなると思います。集団処遇兼地域交流室は,施設の中から入れる入居者用の出入り口と,施設の外から直接交流室に入ることのできる地域の方用の出入り口と2か所設けられていて,地域の人が気軽に入りやすいような配慮がなされていました。
 施設の方にいただいた「雄郡寮たより」にも地域との関わりを大切にしている姿がみられました。掲載されていたのは,雄郡寮ガレージセールが開催された様子,地域交流室で地域の人が集まっている教室の様子,クリスマス会等の行事の様子,夕食支援活動の様子などでした。
 ガレージセールの写真を見て,とても沢山の人が集まっていたこと,厚生労働大臣や議員などの来賓の方も多いこと,協力団体も多いことに驚きました。多くの人が集まってくださるのは,日ごろから,施設の方が人のつながりを大切にしようと努力されているからだと思います。今回,施設を訪問した際に,施設長がガレージセールの案内を地域の家々に配りに行ったときの話を伺いました。90パーセント以上の家の方が,玄関ドアを開けて,面前で直接,案内を受け取ってくれたということで,地域の方が施設の取組に関心を持ち,理解を示しているのだなと感じました。
 ガレージセールのオープニングで,地域の中学校の吹奏楽部が演奏したことも伺いました。この演奏は,更生を目指す人たちにとって,とても良い効果をもたらしたのではないかなと思います。音楽それ自体,人を癒す効果があると思いますが,特に,生演奏の臨場感を感じられること,そして,学生が真剣に演奏する姿を間近で見て,人によっては,自分が学生時代のことを思い出したり,自分の子供や孫のことを考えたりすることは,その日だけでなく,その後も,毎日を懸命に生きようとする活力につながるのではないかと思います。以前,刑務所見学に行った際,刑務所で年に1度開催される幼稚園児のお遊戯会が好評だ,というお話を伺いました。小さい子どもが一生懸命になっている姿を見て,涙を流される方も多いそうです。このような取組はぜひ続けていってほしいなと思いました。
 施設の内部でも人との関わりが大切にされているなと思いました。入居者は,仕事に行く前に行き先,戻る時間を施設の人に伝え,仕事から戻った後も無事戻ったことを伝えるということをしているそうで,施設の方は家族のように入居者を温かく見守っていることが分かりました。行き先等を告げるのはほんの数秒のコミュニケーションですが,それを毎日積み重ねることで,入居者は自分を気にかけてくれる人がいることの安心感,ありがたさを感じられるのだろうなと想像します。そして,その感情が人の役に立ちたいという気持ちにつながって,更生に大いに結びつくのだろうと思います。
 今回,施設の方にさまざまなお話を伺って,貴重な経験をさせていただきました。ありがとうございました。

 

   受容というプロセス
                                 第70期司法修習生 D
 雄郡寮に入って初めて受けた印象は,「すごく綺麗だ」というものだった。
 建物自体も,駐車場も,建物の中も,いずれも丁寧に掃除や管理がなされており,部屋に入れば畳の香りが,地域交流室に入れば木の香りがした。施設長から,これでも築10年に近づきつつあると聞き,さらに驚いた。
 私は,法律家となるための勉強の一環として,雄郡寮の見学に来た。
 これまで,刑罰に関わる法律を勉強してきた。しかし,「何が犯罪になり,どのように刑罰が決まるか。」という刑罰の入口の部分は勉強したけれど,「どのように処罰され,どのように社会に戻るか。」という刑罰の中身と出口から先の部分は,ほとんど勉強する機会がなかった。この度の雄郡寮の見学は,刑罰の出口から先の部分について考える,大変良い機会となった。
 罪を犯した者であっても,その者がいずれ社会に戻ることは,法律それ自身が基本的に予定していることである。
 刑務所において刑を受けることは,それが罰である以上,「その性質において害悪であり,かつ,苦痛」でなければならず,そしてそれは犯罪からの隔離であると同時に,社会からの隔離でもある。罪を犯した者は,犯罪から隔離された「綺麗な世界」で,その者にふさわしい刑を受け,更生の道を歩き始めることになる。それは,自身の行為の受容と反省というプロセスである。
 この,罪を犯した者が,自らの行為を省みて同じことを繰り返さないという気持ちを,いつまでも持ち続けることは,本人の更生のために必要な,正しいことなのかもしれない。しかし,社会の側が,いつまでも,一度罪を犯した者をずっと隔離し,犯罪者としてしか受け止めないことは,決して正しいことではない。罪を犯した者に対して社会が科すべき相応の刑罰は,受刑が終了した時点で,科され尽くしているはずだからである。
 そうすると,自らの行為を受容して,更生を目指す者に対しては,今度は社会がその者を受容するプロセスがなければならない。
 この,社会による受容というプロセスが完了して,初めて「更生」が達成される。
 社会による受容がない限り,罪を犯さなければ生きられない状況に至るまで,長い時間は掛からないであろう。
 世間は,必ずしも雄郡寮のように綺麗な場所ではない,と思う。
 それでも,10年近く雄郡寮が綺麗なのは,地域社会と寮生と,運営に携わる人々の,雄郡寮に綺麗なままであってもらおうとする,努力の成果であると思う。
 これからも雄郡寮は,綺麗なままで,社会による受容というプロセスの重要な一翼を担ってもらいたいと感じている。
 同時に,私自身,一人の法律家として,社会による受容というプロセスの重要性を,折りに触れて伝えて行きたいと考えている。

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